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80代の親を持つ40代の皆さまへ。
相続や終活の話題といえば、まず思い浮かぶのは「預金」や「不動産」といった“目に見える財産”です。しかし、今の時代、それだけでは不十分です。
スマホ、クラウド、SNS、メール、動画……。いまや人生の記録の多くが“デジタルの中”にあります。法律上は評価されにくいこうした「デジタル遺産」ですが、実は遺族にとってかけがえのない“心の財産”となることも多いのです。
本記事では、「デジタル遺産」とは何か、そしてどう整理していくべきかを、司法書士としての視点を交えながら丁寧に解説していきます。
「デジタル遺産」とは、スマートフォンやパソコン、クラウドに保存された写真・動画・音声・メール・SNSアカウントなど、故人が生前に作成・保存していたあらゆるデジタルデータのことを指します。
たとえば、以下のようなものが該当します:
スマホやクラウドに保存された写真・動画
LINEのメッセージ履歴やメール
FacebookやInstagramなどSNSの投稿履歴
ブログやYouTubeチャンネル
オンライン銀行・証券口座、仮想通貨
ネットショッピングのID・パスワード
これらの多くは、相続税法上では「金銭的価値がない」または「評価が困難」とされ、課税の対象にはなりません。つまり、法的には“価値ゼロ”という扱いになることも多いのです。
しかし、残された家族にとって、それは“ゼロ”どころか、何にも代えがたい宝物になることがあります。亡くなった親が残した写真、動画、あるいは日々の思いを綴ったSNSの投稿。それは、何物にも代えがたい「心の相続財産」となるのです。
このデジタル遺産、最も大きな問題は「アクセスできないこと」にあります。
仮に親がクラウドに何千枚もの写真を保存していたとしても、アカウント情報(IDとパスワード)がわからなければ、それに触れることすらできません。生前、スマホのロック解除コードを教えてもらっていなければ、スマホそのものも開けない可能性があります。
つまり、存在はわかっていても、見ることができない——これが、デジタル遺産の最大のリスクなのです。
私の事務所でも、「亡くなった母のスマホに、孫との動画があると聞いていたのに、どうしても開けない」「父のパソコンに遺言書があるかもしれないが、パスワードが不明で確認できない」といったご相談を受けることがあります。
まさに、“鍵のない宝箱”状態です。
では、このようなトラブルを未然に防ぐためには、何をすればよいのでしょうか?
デジタル遺産の整理には、以下の4つのステップが重要です。
まずは、自分(あるいは親)が、どのようなデジタル資産を持っているかを把握することが第一歩です。以下のような「在庫リスト」を紙やExcelなどで作成しましょう。
使用しているSNS(Facebook/Instagram/Xなど)
写真や動画の保存場所(Googleフォト/iCloud/外付けHDDなど)
利用しているメールアドレスとサービス
オンライン金融サービス(ネット銀行/証券口座など)
クレジットカード、ポイントサービス(楽天/Amazonなど)
このリストがあれば、万が一のときに家族が何をどう対応すればいいか、道筋が見えてきます。
次に、「この人にデジタル遺産の管理を任せたい」という信頼できる人を遺言書で指定しておきましょう。この人を「デジタル遺産の執行人(Digital Executor)」と呼びます。
例えば、
SNSアカウントを削除する
写真や動画をダウンロード・保存する
メールアカウントを閉鎖する
といった処理を、このデジタル執行人に任せるわけです。
ポイントは、ITにある程度明るい人物を選ぶこと。そして、生前にしっかり意思を伝えておくことが重要です。
FacebookやGoogleなど、一部のサービスでは、アカウントの引き継ぎ設定が用意されています。
Facebook:追悼アカウント管理者(レガシーコンタクト)
Google:アカウント無効化管理ツール(Inactive Account Manager)
これを設定しておけば、死後に家族が最低限の操作や保存をすることが可能になります。知らない方も多いのですが、非常に有効な手段です。
デジタル遺産で最大の課題が、「パスワードをどう伝えるか」です。
もっともおすすめなのは、信頼できるパスワード管理アプリ(例:LastPass/1Password)を使い、家族を緊急連絡先に設定しておくこと。
他にも、紙に書いて金庫に保管したり、公正証書にするなどの方法もあります。が、紛失や漏洩リスクとのバランスを考える必要があります。
近年では、音声を録音してAIと連携し、故人の声で対話ができる「ボイスボット」サービスも登場しています。
「動画で残すのは重たすぎる」「でも、声なら温かくて残したい」——そう考える方が増えてきました。
自分の思い出をどう残すのか?という問いは、まさにデジタル終活の核心です。
私自身、相続や遺言書の作成をお手伝いする中で、今後は「デジタル資産」の項目を入れることが当たり前になると感じています。
デジタル執行人の指定
アカウントの扱いの希望
データの保存・削除の指示
これらを遺言書に明記しておくことで、残されたご家族が悩まずにすみます。
司法書士としても、終活支援においてデジタル資産の整理をサポートすることは、これからの時代に必要なサービスだと考えています。
もし、この記事を読んでくださったあなたが、40代で80代の親をお持ちなら——
ぜひ、こう尋ねてみてください。
「スマホに大事な写真、入ってる?」
「その写真、もしものとき、どうしたらいいかな?」
この小さな会話が、やがて家族全体の安心につながっていきます。
“相続”とは、「財産」だけではありません。「思い出」や「心」もまた、大切なバトンです。
そして、私たち司法書士は、そのバトンが確実に渡るよう、法律と制度の面からお手伝いをしています。
今のうちに、話しておきましょう。
デジタル遺産も、あなたの人生の一部ですから。
【繁森 一徳|司法書士しげもり法務事務所】
大阪市で高齢者支援と相続に力を入れる司法書士。やさしく、わかりやすく、そして誠実に。人生の終わりを「安心で結べる」よう、日々ご相談をお受けしています。