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遺言書のお話

2026年04月18日

【2026年法改正】親の認知症で3000万円が引き出せない!? 成年後見制度26年ぶりの大改革と80代の親を持つ40代が今すぐ知るべき対策

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はじめに:突然訪れる「親の口座凍結」の悲劇

「3000万円の預金があるのに、1円も引き出せない」──

これは決してフィクションではなく、認知症の親を持つ家族が直面する現実です。80代の親を持つ40代の皆さん、もし明日、親御さんが認知症と診断されたら、どうしますか?

本記事では、2026年に予定されている成年後見制度の大改正について、実際の事例を交えながら、相続遺言専門の司法書士の視点で詳しく解説します。


実例:5年間の介護の末に訪れた「資産凍結」

岩手県一関市に住む老夫婦には、約3000万円の預貯金がありました。質素な暮らしを続け、満期が来ても自動継続になる定期預金にほぼ全額を預けていたのです。

介護生活の始まり

夫婦がともに認知症を患い、世話を担ったのは都内在住の一人娘でした。当初は月に数回、週末に帰って世話をしていましたが、認知症が進行すると会社を辞め、両親とともに暮らし始めます。

親の年金と自分の貯金を切り崩しながら5年間介護を続けましたが、次第に「このままだと貯金はなくなる」という不安が大きくなっていきました。両親は自営業で年金も少なかったのです。

決定的な瞬間

母親が特別養護老人ホームに入所することになり、所得が低いため負担限度額認定が受けられたものの、それでも月額6万円程度の出費が発生しました。アルバイトを始めたものの、介護との両立は週3日が精一杯。

限界を感じた女性は、「本当にどうしようもないときまで使わない」と決めていた親の定期預金を解約することに決めました。

銀行での絶望

通帳とハンコを持って金融機関に行き、「親の定期預金を解約したい」と伝えたところ、こう言われます。

「契約者ご本人様が来られるか、ご本人様直筆の委任状が必要になります」

「でも父は認知症で、もう文字も書けないんです」

そう答えると、金融機関の担当者は言いました。

「だとしたら、解約は難しいです。でも、成年後見制度を使えば解約は可能です」


成年後見制度とは?──基礎知識と現行制度の課題

制度の概要

成年後見制度は2000年4月に施行された制度で、判断能力が不十分な認知症高齢者や知的・精神障害者の財産管理や生活を支援することを目的としています。

大きく分けて2つの類型があります:

1. 法定後見
すでに判断能力が不十分になっている人を対象に、家庭裁判所が選任した「成年後見人」等がサポートする制度。さらに判断能力の程度に応じて「後見」「保佐」「補助」の3段階に分けられます。

2. 任意後見
将来の判断能力低下に備えて、あらかじめ本人が信頼できる人と契約を結び、後見人を指名しておく制度。

26年間指摘され続けた課題

しかし、この制度には施行当初から多くの課題が指摘されてきました:

課題1:事実上の「終身制」
一度後見開始が決まると、本人の判断能力が回復しない限り制度の利用を終了することが極めて困難でした。たとえば、遺産分割協議のためだけに後見人をつけたいというニーズがあっても、その後一生涯、後見人がつき続けることになってしまうのです。

課題2:包括的な代理権による自己決定の制限
後見人には包括的な代理権・取消権が与えられるため、本人の意思に関わらず、後見人の判断で多くのことが決められてしまいます。本人の「自分らしく生きる権利」が制限されるという根本的な問題がありました。

課題3:後見人の交代が困難
後見人に不正が発覚したり、家族との関係が悪化したりしても、解任や交代が非常に難しいという問題がありました。

課題4:家族が後見人になれないケース
家庭裁判所が選任する際、弁護士や司法書士などの専門職後見人が選ばれることが多く、家族が希望しても家族後見人になれないケースが増えていました。


2026年大改正:「終われる成年後見」へ

こうした26年間の課題を解決するため、法務省の法制審議会は2026年2月、「民法等(成年後見等関係)の改正に関する要綱」を取りまとめました。

改正の5つの柱

1. 制度の途中終了が可能に
家庭裁判所の判断により、本人の判断能力が回復していない場合でも、必要がなくなれば制度の利用を終了できる規定が新設されます。これにより「終身制」から「必要なときだけ利用できる制度」へと生まれ変わります。

2. 3類型を「補助」に一本化
従来、判断能力に応じて「後見」「保佐」「補助」の3段階に分けていましたが、これを「補助」に一本化。より柔軟な対応が可能になります。

3. 包括的代理権の廃止
包括的な代理権の付与を廃止し、代理権や同意権は必要な範囲に限って個別に付与する方式に変わります。これにより、本人の自己決定権がより尊重されます。

4. 補助人の交代を容易に
「本人の利益のため特に必要がある」という事由を設け、補助人の交代が従来よりも容易になります。

5. 本人の意思尊重義務の強化
本人の意向把握を必須とし、本人の意思尊重義務をより強化します。形式的な支援ではなく、真に本人に寄り添った制度運用が求められます。

例外措置:「特定補助人」制度

一方で、事理弁識能力(自己の行為の結果について認識し判断する精神的能力)を常に欠いている状態の人に限って、類型的取消権を有する「特定補助人」を付する制度も例外的に設けられます。

これは、悪質商法などから本人を守るための措置です。


改正後も残る懸念──「後見制度と家族の会」の指摘

制度改正を歓迎する声がある一方、成年後見制度の利用者やその家族を中心に組織された「後見制度と家族の会」は、2026年3月31日に都内で会見を開き、要綱の問題点を指摘しています。

主な懸念点は以下の通りです:

懸念1:家族後見人の優先順位
改正要綱では、本人が選んだ後見人や家族を後見人の優先順位の上位にすることが明確に規定されていないという指摘があります。

懸念2:運用面での不透明性
制度上は改善されても、実際の運用で本当に本人の意思が尊重されるのか、家庭裁判所の判断基準が不透明だという声もあります。

懸念3:専門職後見人への偏重
依然として弁護士や司法書士などの専門職後見人が優先的に選任されるのではないかという懸念が残ります。

これらの懸念については、今後の法改正の過程や施行後の運用を注視していく必要があります。


80代の親を持つ40代が今すぐすべき3つの対策

成年後見制度の改正は一歩前進ですが、制度を利用しなくて済む「事前の備え」が最も重要です。

対策1:任意後見契約を検討する

任意後見契約とは?
本人が元気で判断能力があるうちに、将来認知症になったときに備えて、信頼できる人(家族や専門家)と契約を結び、後見人を指名しておく制度です。

メリット
自分で後見人を選べる
後見人に任せる内容を自由に決められる
法定後見より本人の意思が反映されやすい

始めるタイミング
親御さんがまだ元気で、判断能力に問題がないうちに契約を結ぶ必要があります。「認知症かも?」と思ってからでは遅いのです。

対策2:家族信託を活用する

家族信託とは?
財産を持つ人(委託者)が、信頼できる家族(受託者)に財産の管理・処分を託す仕組みです。認知症になった後も、受託者が柔軟に財産を管理できます。

成年後見制度との違い
裁判所の関与が不要
より柔軟な財産管理が可能
本人が元気なうちに家族で決められる
成年後見制度のような報酬が不要(専門家への相談料は別)

活用例
賃貸不動産の管理
定期預金の解約・運用
自宅の売却(介護施設入所のため)

対策3:エンディングノートと家族会議

エンディングノートに書くべき内容
預貯金・不動産などの資産リスト
保険証券の保管場所
かかりつけ医療機関
介護や終末期医療の希望
葬儀・お墓の希望

家族会議のポイント
親が元気なうちに、以下のことを家族で話し合っておきましょう:
介護が必要になったときの方針
施設入所の希望
資産の管理方法
相続についての親の意向

「縁起でもない」と思われるかもしれませんが、親が元気だからこそ、冷静に話し合えるのです。


司法書士が見た「後悔する家族」と「備えていた家族」

後悔するケース

ケース1:「まだ早い」と先延ばしにした結果
「父はまだ75歳だし元気だから、もう少し先でいいや」と思っているうちに、突然脳梗塞で倒れ、重度の認知機能障害に。急いで成年後見の申立をしたものの、家族ではなく専門職後見人が選任され、毎月の報酬負担が発生しました。

ケース2:「家族だから大丈夫」という思い込み
親の通帳と印鑑を持っていたので「いざとなれば引き出せる」と思っていたら、銀行で本人確認を求められ、認知症であることを正直に伝えたところ、口座が凍結されてしまいました。

備えていたケース

ケース1:70歳で任意後見契約を締結
親が70歳のときに任意後見契約を結び、長男を後見人に指定。80歳で認知症の診断を受けた後、スムーズに任意後見がスタート。家族の意向に沿った介護と財産管理が実現しました。

ケース2:家族信託で不動産管理
賃貸アパートを所有する親が、長女を受託者とする家族信託を設定。親が認知症になった後も、長女の判断でアパートの修繕や管理会社との契約変更が可能になり、収益も安定して確保できました。


まとめ:「今」が備えどき

成年後見制度は26年ぶりの大改正により、より本人に寄り添った制度へと生まれ変わろうとしています。「終身制」から「必要なときだけ利用できる制度」へ──これは大きな前進です。

しかし、最も大切なのは「制度を使わなくて済む備え」です。

80代の親を持つ40代の皆さん、親御さんが今まだ元気なうちに、ぜひご家族で「もしものとき」について話し合ってみてください。

任意後見契約
家族信託
エンディングノート
家族会議

どれか一つでも始めることが、将来の安心につながります。

「まだ早い」と思っている今が、実は「最適なタイミング」なのです。

もし「何から始めればいいかわからない」という方は、お近くの司法書士や専門家にご相談ください。私たちは、ご家族一人ひとりの状況に合わせた「最適な備え」をご提案いたします。

皆さんとご家族の未来が、安心で穏やかなものでありますように。


参考記事
Yahoo!ニュース「3000万円以上あるのに1円も引き出せない…両親の認知症で資産凍結」
https://news.yahoo.co.jp/articles/f310d5c70ab789a183909cd5d70f766d34024526

Yahoo!ニュース「成年後見制度『26年ぶり改正』でも拭えぬ懸念」
https://news.yahoo.co.jp/articles/a44cf0560dad0c0a371e84d14e7cbb5866454cc6


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