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遺言書のお話

2026年04月23日

養子縁組と生前贈与で相続税対策は本当に有効か?2024年税制改正後の新常識と注意点

大阪の遺言書作成サポート司法書士ゆいごんのしげもり

はじめに

80代の親を持つ40代の皆さんにとって、「相続」はもはや他人事ではありません。親が元気なうちに何か対策をしておきたい、できれば相続税も減らしたい――そう考えるのは自然なことです。

インターネットや書籍で相続対策について調べると、必ずといっていいほど出てくるのが「養子縁組」と「生前贈与」というキーワードです。「養子縁組をすれば基礎控除が増える」「毎年110万円ずつ贈与すれば非課税」といった情報を目にしたことがある方も多いでしょう。

しかし、2024年度の税制改正により、相続・贈与に関する制度の前提が大きく変わりました。従来と同じ感覚で対策を進めると、節税どころか税務否認や家族間トラブルを招くリスクがあります。

本記事では、Yahoo!ニュースで取り上げられた「節税どころの話じゃない…『養子縁組』『生前贈与』がはらむ相続リスク」という記事をもとに、相続遺言専門の司法書士の視点から、40代の皆さんが知っておくべきポイントを詳しく解説します。


養子縁組は「節税手段」ではなく「家族関係の形成」である

養子縁組とは何か

養子縁組とは、血縁関係のない者同士が法律上の親子関係を成立させる民法上の制度です。養子になった者は、実子と同じく法定相続人となり、相続権や扶養義務などの権利義務を持ちます。

相続税の観点から見ると、養子が増えることで以下のメリットがあります。

・相続税の基礎控除額が増える(1人あたり600万円)
・生命保険金の非課税枠が増える(1人あたり500万円)
・死亡退職金の非課税枠が増える(1人あたり500万円)

例えば、相続人が配偶者と子ども2人の場合、基礎控除は「3000万円 + 600万円 × 3人 = 4800万円」です。ここに養子を1人加えると「3000万円 + 600万円 × 4人 = 5400万円」となり、600万円分の控除が増えることになります。

このため、「養子縁組=節税策」として紹介されることが多いのですが、ここには大きな誤解があります。


養子縁組の本質は家族関係の形成

養子縁組は税制上のテクニックではなく、あくまで「家族関係を作るための制度」です。養子は法定相続人となるため、遺留分を持ちますし、遺産分割協議にも参加します。

つまり、養子縁組をすることで家族の人数が増え、財産の分け方や相続後の関係性にも影響が及ぶということです。

税務メリットだけを目的に形式的な養子縁組を行い、実態として親子関係が伴わない場合、後に「縁組無効」とされるリスクがあります。


最高裁判例が示した重要な判断基準

平成29年1月31日、最高裁判所は養子縁組に関する重要な判決を出しました。この判決では、「節税目的であっても、それだけで養子縁組が直ちに無効になるわけではない」としながらも、「実質的に親子関係を形成する意思が認められない場合には無効となり得る」と判断されています。

つまり、税務上のメリットを狙った養子縁組でも、実際に親子としての関係性や生活実態があれば有効ですが、書類上だけの形式的なものであれば無効とされる可能性があるということです。

実務では、「節税目的かどうか」ではなく、「実態として親子関係が成立しているか、合理的な背景があるか」が重視されます。


養子縁組を検討する際の注意点

養子縁組を検討する際には、以下の点を慎重に考える必要があります。

・養子となる人と被相続人との間に実質的な親子関係があるか
・他の相続人が納得しているか、理解しているか
・養子となる人が遺産分割に関与することで、紛争リスクが増えないか
・将来的に養子との関係が変化した場合のリスクを考慮しているか

節税だけを目的にした養子縁組は、かえって家族の信頼関係を損ね、相続争いの火種になりかねません。


養子縁組と生前贈与のタイミングが重要な理由

贈与税の課税関係は「贈与時点の親族関係」で決まる

養子縁組と生前贈与を組み合わせる場合、最も重要なのが「タイミング」です。

贈与税の課税関係は、贈与が行われた時点での親族関係によって決まります。つまり、養子縁組をする前に贈与を行った場合と、縁組後に贈与を行った場合では、税務上の扱いが全く異なるのです。

具体的には、養子縁組前に行った贈与は「他人への贈与」として暦年課税の対象となります。そして、その後に養子縁組をして相続時精算課税制度を選択したとしても、過去の贈与を遡って精算課税に取り込むことはできません。

この順番を誤ると、申告誤りや追加課税の対象となる可能性があります。


相続時精算課税制度とは

相続時精算課税制度とは、贈与時には軽減された税率で課税し、相続時に贈与財産と相続財産を合算して精算する制度です。

従来は、2500万円までの特別控除があり、それを超える部分には一律20%の贈与税が課されていました。そして相続時に、贈与財産と相続財産を合算して相続税を計算し直し、すでに支払った贈与税を差し引く仕組みでした。

この制度を選択すると、暦年課税(年間110万円の基礎控除)には戻れないという制約がありました。


2024年度税制改正で何が変わったのか

2024年度の税制改正により、相続時精算課税制度に大きな変更が加えられました。

最も重要な変更点は、「年間110万円の基礎控除」が新設されたことです。

これにより、相続時精算課税を選択した場合でも、年間110万円以下の贈与については以下のような扱いになります。

・贈与税の申告が不要
・相続財産への加算対象外

つまり、精算課税を選んでも毎年110万円までは非課税で贈与でき、相続時に持ち戻す必要もないということです。

従来の「一括で大きな財産を移転する」という使い方に加えて、「毎年少しずつ贈与する」という使い方もできるようになり、制度の性格が「一括移転型」から「ハイブリッド型」に変化したと言えます。


改正後の精算課税制度の活用ポイント

この改正により、相続時精算課税制度の使い勝手が大きく向上しました。特に以下のような場合に有効です。

・収益物件などの資産を早期に移転し、その後の収益は受贈者に帰属させたい
・将来値上がりが見込まれる資産を、現在の評価額で移転したい
・毎年110万円ずつ贈与して、相続財産を少しずつ減らしたい

ただし、2500万円を超える部分については贈与時に20%の贈与税が課税され、相続時に精算される基本構造は変わっていません。


養子縁組と贈与を組み合わせる場合の実務上の注意点

養子縁組と生前贈与を組み合わせる場合、以下の点に注意が必要です。

・養子縁組の前後で贈与のタイミングを慎重に設計する
・贈与契約書を毎回作成し、証拠を残す
・定期贈与と判断されないよう、毎年異なる金額や時期で贈与する
・相続時精算課税を選択する場合は、届出書を期限内に提出する
・他の相続人にも状況を共有し、理解を得ておく

特に、相続時精算課税を選択する場合は、最初の贈与を受けた年の翌年3月15日までに税務署に届出書を提出する必要があります。この届出を忘れると、精算課税は適用されませんので注意が必要です。


節税よりも大切なこと:家族の円満と財産承継の本質

相続対策の本当の目的とは

相続対策というと、どうしても「いかに税金を減らすか」という視点に偏りがちです。しかし、相続対策の本当の目的は、「親の想いをきちんと形にし、家族が揉めずに円満に財産を引き継ぐこと」にあります。

私が司法書士として多くのご家族の相続に関わってきた経験から言えるのは、相続で揉める原因の多くは「お金の額」ではなく、「親の想いが伝わっていない」「家族間のコミュニケーション不足」にあるということです。


養子縁組が引き起こす家族トラブルの実例

養子縁組を行ったことで、かえって家族関係がこじれるケースも少なくありません。

例えば、長男の配偶者を養子にして相続税対策を行ったものの、他の子どもたちが「自分たちの相続分が減る」と反発し、相続後に遺産分割協議が紛糾するケースがあります。

また、孫を養子にした場合、その孫の親(つまり子ども)との関係が悪化し、「親を飛び越えて孫に相続させるなんて」と感情的な対立に発展することもあります。

税務上のメリットだけを追求した結果、家族の信頼関係が崩れてしまっては本末転倒です。


生前贈与が原因で起こるトラブル

生前贈与についても同様です。

特定の子どもだけに多額の贈与を行っていた場合、他の子どもたちが「不公平だ」と感じ、相続時に特別受益として持ち戻しを主張することがあります。

また、贈与の記録が不十分だと、「あれは贈与ではなく貸付だった」「いや、もらったものだ」といった争いに発展することもあります。


専門家に相談することの重要性

相続対策は、税務・法務・家族関係など、多岐にわたる要素が複雑に絡み合います。インターネットの情報だけで判断するのは危険です。

特に養子縁組や生前贈与は、一度実行すると取り消しが難しい場合もあります。実行する前に、必ず専門家に相談することをお勧めします。

相続遺言専門の司法書士や税理士は、単に節税策を提案するだけでなく、ご家族全体の状況を踏まえた総合的なアドバイスを行います。


40代で親の相続対策を考えるときのチェックポイント

40代で80代の親を持つ皆さんが、今からできることは何でしょうか。以下のチェックポイントを参考にしてください。

・親の財産状況を把握していますか?(不動産、預貯金、保険、負債など)
・親の意向を聞いたことがありますか?(誰に何を残したいか、葬儀の希望など)
・兄弟姉妹間でコミュニケーションは取れていますか?
・遺言書の作成は検討していますか?
・相続税の概算を計算したことがありますか?
・親が認知症になった場合の財産管理について考えていますか?

これらを一つずつ確認していくことが、円満な相続への第一歩です。


まとめ:相続対策は「節税」ではなく「家族の未来」のために

2024年度税制改正により、相続・贈与に関する制度は大きく変わりました。養子縁組と生前贈与を組み合わせた従来の手法も、改正後の新しいルールに合わせて見直す必要があります。

しかし、どれだけ制度が変わっても変わらないのは、「相続対策の本質は家族の幸せを守ること」だということです。

節税はあくまで手段の一つであり、目的ではありません。大切なのは、親の想いをきちんと形にし、家族が納得して財産を受け継ぎ、その後も良好な関係を保てることです。

養子縁組や生前贈与を検討する際には、税務上のメリットだけでなく、家族関係への影響や将来のリスクも含めて総合的に判断しましょう。

そして、判断に迷ったときは、ぜひ専門家に相談してください。相続は一生に一度のことです。後悔のない選択をするために、早めに準備を始めることをお勧めします。

参考記事:https://news.yahoo.co.jp/articles/4a77a643ec0622793e2496d97250e27c7a2766ed


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