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遺言書のお話

2026年04月26日

親の預金、死亡届前に引き出すのは本当に大丈夫?相続専門司法書士が教える正しい手続きと生前対策

大阪の遺言書作成サポート司法書士ゆいごんのしげもり

ゴールデンウィークが近づき、久しぶりに実家に帰省する予定を立てている方も多いのではないでしょうか。家族が集まる貴重な時間だからこそ、少しだけ考えておきたいのが「もしものときのお金の話」です。

特に80代の親御さんをお持ちの40代の皆さんにとって、親の相続は決して遠い未来の話ではありません。今回は、相続遺言専門の司法書士として多くのご家族をサポートしてきた経験から、親の預金引き出しをめぐるリスクと、今からできる対策について詳しく解説します。


親の預金、死亡届前ならATMで引き出してもいいのか

「親が亡くなったら、死亡届を出す前にATMでお金を引き出しておけば大丈夫」

こんな話を耳にしたことはありませんか?確かに、銀行に死亡の事実を伝えていない段階であれば、キャッシュカードと暗証番号を使ってATMから預金を引き出すことは物理的には可能です。

しかし、結論から言えば、この行為は絶対におすすめできません。なぜなら、親が亡くなった瞬間から、その預金は法的に「相続財産」となり、相続人全員の共有財産になるからです。

たとえ葬儀代の支払いや医療費の精算といった正当な理由があったとしても、他の相続人への説明が不十分であれば「勝手に引き出した」「使い込みがあったのでは」と疑われ、深刻な相続トラブルに発展してしまう可能性があるのです。


相続トラブルは決して他人事ではない

「うちは家族仲が良いから揉めることはない」「そんなに財産があるわけじゃないから大丈夫」

このように考えている方は少なくありません。しかし、現実はどうでしょうか。

最高裁判所の司法統計によると、2024年に家庭裁判所に持ち込まれた遺産分割事件数は1万5379件に上っています。これは2000年の8889件と比較すると、約25年で約1.8倍にまで増加している計算になります。

さらに注目すべきは、遺産額の内訳です。同じく2024年の統計によれば、家庭裁判所で解決した遺産分割事件のうち、遺産額が5000万円以下の案件が約78パーセントを占めているのです。

つまり、相続トラブルは決して「お金持ちの家庭の話」ではなく、むしろ一般的な家庭でこそ起きやすいということがデータからも明らかになっています。


なぜ一般家庭でトラブルが起きやすいのか

では、なぜ財産が少ない家庭ほど相続トラブルが起きやすいのでしょうか。いくつかの理由が考えられます。

第一に、財産が少ないからこそ「分けられない」という問題があります。例えば、主な相続財産が実家の不動産だけという場合、誰が相続するのか、住まない相続人にはどう補償するのか、といった問題が生じます。

第二に、「少額だから適当でいい」という油断があります。富裕層の場合は早い段階から専門家に相談し、遺言書を作成するなどの対策を講じることが多いのですが、一般家庭では「まだ大丈夫」「話し合えば何とかなる」と先延ばしにしがちです。

第三に、生前の親子関係や兄弟関係の問題が表面化しやすいという点です。「自分は親の介護を一人で担ってきたのに」「兄は生前に援助を受けていたのに」といった不満が、相続の場面で一気に噴出することがあるのです。


親の預金を勝手に引き出すとどうなるのか

では、実際に親の預金を勝手に引き出してしまった場合、どのような問題が起きるのでしょうか。

まず、他の相続人から「使い込みがあった」と疑われる可能性があります。たとえ葬儀代や医療費に使ったとしても、領収書などの証拠がなければ証明が困難です。また、引き出した金額が使途不明金として遺産分割の際に問題となり、相続人間の信頼関係が崩れてしまいます。

最悪の場合、他の相続人から損害賠償請求をされたり、預金の不当利得返還請求訴訟を起こされたりすることもあります。家族間の争いが法廷闘争にまで発展してしまうと、金銭的にも精神的にも大きな負担となります。


では、どうすればいいのか正しい手続きの流れ

親が亡くなった場合、預金の取り扱いについては以下のような正しい手続きの流れがあります。

まず、親が亡くなったら速やかに金融機関に連絡し、口座を凍結してもらいます。これにより、勝手な引き出しを防ぐことができます。

次に、相続人全員で遺産分割協議を行います。誰がどの財産を相続するのか、全員が納得する形で話し合いを進めます。

その後、遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名・押印します。この協議書と戸籍謄本などの必要書類を金融機関に提出することで、預金の払い戻しや名義変更の手続きが可能になります。

なお、葬儀代などすぐに必要な費用については、金融機関によっては「仮払い制度」を利用できる場合があります。これは、遺産分割協議が完了する前でも、一定額までは相続人が引き出せる制度です。ただし、金融機関ごとにルールが異なるため、事前に確認しておくことが大切です。


生前からできる対策とは

ここまで、親が亡くなった後の対応について説明してきましたが、実は最も重要なのは「生前の準備」です。親がまだ元気なうちに対策を講じておくことで、相続トラブルの多くは防ぐことができます。


遺言書の作成

最も基本的かつ効果的な対策が遺言書の作成です。親自身が「誰に何を相続させたいのか」を明確に書き残しておくことで、相続人間の争いを大幅に減らすことができます。

遺言書には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類がありますが、最も確実なのは公正証書遺言です。公証役場で公証人が作成するため、形式的な不備がなく、原本が公証役場に保管されるため紛失の心配もありません。

また、2020年7月からは自筆証書遺言を法務局で保管してもらえる制度も始まっています。こちらも紛失や改ざんのリスクを避けられるため、選択肢の一つとして検討する価値があります。


家族信託の活用

最近注目されているのが「家族信託」という仕組みです。これは、親が元気なうちに、財産の管理を信頼できる家族(多くの場合は子ども)に託す制度です。

家族信託を設定しておけば、親が認知症などで判断能力が低下した場合でも、受託者である子どもが財産を管理・処分することができます。これにより、成年後見制度を利用する必要がなくなり、より柔軟な財産管理が可能になります。


生前贈与の検討

相続税対策として生前贈与を検討する方も多いでしょう。ただし、2024年以降の税制改正により、相続開始前7年以内の贈与は相続税の課税対象に加算されるようになりました(段階的に施行)。

生前贈与を行う場合は、税制の変更点を十分に理解した上で、計画的に進めることが重要です。また、特定の子どもだけに多額の贈与を行うと、それが「特別受益」として相続時に問題になることもあるため、注意が必要です。


財産目録の作成

遺言書とは別に、親の財産を一覧にした「財産目録」を作成しておくことも有効です。預貯金、不動産、株式、保険、借入金など、すべての財産と負債をリストアップしておきます。

これにより、相続が発生したときに相続人が財産を把握しやすくなり、遺産分割協議がスムーズに進みます。また、財産目録を家族で共有しておくことで、透明性が高まり、後のトラブルを防ぐことにもつながります。


定期的な家族会議の開催

最も大切なのは、家族間のコミュニケーションです。親が元気なうちから、相続や財産について話し合う機会を持つことで、お互いの考えや希望を理解し合うことができます。

ゴールデンウィークやお盆、お正月など、家族が集まるタイミングを利用して、軽い雰囲気で「もしものときの話」を始めてみてはいかがでしょうか。最初は「エンディングノートを書いてみない?」といった提案から始めるのもよいでしょう。


専門家への相談も選択肢の一つ

相続の問題は法律、税金、不動産など多岐にわたる専門知識が必要です。自己判断で進めてしまうと、後で思わぬ問題が発生することもあります。

相続遺言専門の司法書士や税理士、弁護士などの専門家に早めに相談することで、それぞれの家庭の状況に合わせた最適な対策を講じることができます。特に以下のような場合は、専門家のサポートを受けることをおすすめします。

相続人の数が多い、または関係が複雑な場合
不動産など分割しにくい財産が多い場合
相続税が発生する可能性がある場合
家族間で既に意見の対立がある場合
親が認知症の兆候を見せ始めている場合

専門家への相談は「まだ早い」ということはありません。むしろ、問題が顕在化する前に相談することで、選択肢も多く、コストも抑えられることが多いのです。


まとめ

親の預金を死亡届前に引き出すことは、物理的には可能でも法的・道義的には大きな問題があります。相続トラブルは決して他人事ではなく、むしろ一般家庭でこそ起きやすいというデータもあります。

大切なのは、親が元気なうちに家族で話し合い、遺言書の作成や財産目録の整理など、できる準備を進めておくことです。

このゴールデンウィーク、久しぶりに家族が集まる機会に、少しだけ勇気を出して「もしものときの話」を始めてみませんか。重苦しく構える必要はありません。「通帳はどこにあるの」「希望する葬儀のイメージは」といった軽い会話から始めるだけでも、大きな一歩になります。

早めの準備と家族間のコミュニケーションが、ご家族全員の安心につながります。もし何から始めればいいか分からないという場合は、遠慮なく専門家にご相談ください。

https://news.yahoo.co.jp/articles/58c9b07e15900b244dc8b442fd6bc5deabdb8861


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