

こんにちは。相続遺言専門司法書士です。
今回は、80代の親を持つ40代の方に向けて、最近のYahoo!ニュースで話題になっている相続税対策の重要なトピックを3つご紹介します。
1. 配偶者控除を「使い切る」vs「あえて使わない」:二次相続まで見据えた戦略
遺産総額1億3000万円(不動産8000万円、現預金5000万円)を相続する70代の妻と50代の長男のケースが紹介されていました。
配偶者の税額軽減を使えば、一次相続で相続税をゼロにすることは可能です。しかし、この選択が必ずしも正解ではありません。
二つのシミュレーション結果がこちらです。
パターン1:一次相続で妻がすべて相続
一次相続:0円
二次相続:約2120万円
合計:約2120万円
パターン2:一次相続で長男が収益物件と現預金を相続
一次相続:約476万円
二次相続:約235万円
合計:約711万円
その差は1400万円以上。目先の節税にとらわれず、二次相続まで見据えた遺産分割が重要であることがわかります。
なぜこのような差が生まれるのか
一次相続で配偶者がすべてを相続すると、二次相続時の相続財産が大きくなります。さらに、二次相続では配偶者控除が使えず、基礎控除額も減少します(相続人が1人減るため)。
一方、一次相続である程度の財産を子世代に移しておけば、二次相続での課税対象財産を抑えることができます。
実務上の注意点
二次相続対策を進める際は、以下の点に注意が必要です。
・配偶者の老後資金を十分に確保する
・配偶者の意向を尊重する
・小規模宅地等の特例の適用可能性を検討する
・将来の相続税率の変化も視野に入れる
80代の親を持つ方は、今のうちに専門家に相談し、一次相続と二次相続のトータルでの税負担を試算しておくことをお勧めします。
2. 高市政権による相続税の「抜け道」封じ:令和8年度税制改正
自民党税制調査会が刷新され、富裕層の過度な相続税対策に対するメスが入ります。
これまで横行していた節税スキーム
賃貸マンションを一棟買いしたり、商業ビルを小口化・債券化した商品を購入することで、課税対象の相続財産を大幅に減らすスキームが横行していました。
例えば、10億円で購入した賃貸マンションが、財産評価基本通達に基づく評価ではわずか3億円程度とされるケースがありました。これは70%もの評価圧縮です。
国税庁は通達の運用で対応してきましたが、もはや防ぎきれない状況に陥っていました。
新税法の内容
令和8年度税制改正では、亡くなる5年以内に取得した貸付用不動産は、購入価格の80%で評価されることになります。
10億円で購入した物件の場合:
従来:約3億円で評価(70%圧縮)
新制度:約8億円で評価(20%圧縮)
相続の直前に賃貸不動産を購入しても、節税効果はほとんど得られなくなります。「5年以上生きる」ことでようやく節税効果が発揮される仕組みです。
ただし、5年以上前から所有している土地に新たに賃貸建物を建てる場合は、対象外とされます。
実務への影響
この改正により、相続税対策はより長期的・計画的な視点が求められるようになります。
・少なくとも5年以上前から対策を開始する必要がある
・健康状態や年齢を考慮した無理のない計画が重要
・不動産投資としての収益性も十分に検討すべき
今後の相続税対策は、「節税ありき」ではなく、「資産運用としての健全性」を前提とした設計が求められます。
3. 不動産小口化商品の節税メリットが後退
ここ数年、相続税対策の手段として注目されてきた不動産小口化商品。一口100万円から購入でき、相続や贈与の場面で分けやすいという利点がありました。
不動産小口化商品とは
不動産小口化商品は、一棟の不動産を複数の投資家で共有する仕組みです。
特徴:
・少額から投資可能(一口100万円程度から)
・口数単位で保有できる
・相続や贈与の際に分けやすい
・現物不動産より手続きが簡単
評価方法の厳格化
しかし、法律改正により評価方法が厳しくなりました。
改正前:大幅な評価額の圧縮が可能
改正後:亡くなった日の時価で評価(実務上は購入金額の8割程度)
「相続税を大きく下げる商品」として見ると、魅力はかなり後退したと言えます。
残されたメリット
ただし、不動産小口化商品が完全に無意味になったわけではありません。
メリットとして残っているのは:
・現物不動産よりも分けやすい
・複数の相続人がいる家庭で公平に分割しやすい
・口数単位で贈与を調整できる
・換金性が比較的高い
例えば、10口保有している場合、長男に4口、次男に4口、三男に2口といった形で柔軟に配分できます。現物不動産のように「この土地をどう分けるか」で揉めにくいというメリットがあります。
今後の活用方針
節税効果を主目的にするのではなく、以下の視点で判断する必要があります。
・商品自体の収益性は適正か
・換金性やリスクは許容範囲か
・相続人間での分割のしやすさが必要か
・他の相続対策と組み合わせて効果的か
「分けやすさ」「扱いやすさ」を評価し、商品自体の収益性やリスク、換金性まで含めて冷静に判断することが重要です。
まとめ
相続税対策を巡る環境は大きく変化しています。
重要なポイントは以下の3点です。
1. 一次相続だけでなく、二次相続まで見据えたトータルでの税負担を考える
2. 税制改正により、直前の駆け込み的な節税対策は効果が薄れている
3. 不動産を活用した相続税対策は、節税効果だけでなく総合的な視点で判断する
これからの相続税対策
従来の「節税ありき」の発想から、以下のような視点への転換が求められています。
・短期的な節税効果より、世代を超えた最適化
・制度の抜け道より、王道の長期戦略
・単一の手法より、総合的なポートフォリオ
80代の親を持つ40代の方へのアドバイス
80代の親を持つ40代の方は、まだ時間的な余裕があります。親の判断能力が十分なうちに、以下のアクションをお勧めします。
1. 家族会議を開き、相続についての意向を確認する
2. 専門家に相談し、一次・二次相続のシミュレーションを行う
3. 遺言書の作成を検討する
4. 必要に応じて生前贈与や家族信託を活用する
5. 定期的に見直しを行う
相続対策は「早すぎる」ことはありません。今が、将来の家族の幸せのために行動を起こす最適なタイミングです。
相続に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。