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遺言書のお話

2026年05月13日

成年後見制度が26年ぶり大改正へ:80代の親を持つあなたが今から準備すべきこと

大阪の遺言書作成サポート司法書士ゆいごんのしげもり

2026年4月、政府は成年後見制度を抜本的に見直す民法改正案を閣議決定しました。2000年の制度開始以来、実に26年ぶりとなる大改正です。この改正は、80代の親を持つ40代の皆さんにとって、極めて重要な意味を持ちます。本記事では、相続遺言専門の司法書士として、今回の改正内容とその影響、そして今から準備すべきことについて、わかりやすく解説します。


成年後見制度とは何か:基本をおさらい

成年後見制度は、認知症や知的障害、精神障害などによって判断能力が不十分になった方を法律的に支援する仕組みです。判断能力が低下すると、日常生活での契約行為や財産管理が困難になります。悪質な訪問販売の被害に遭ったり、必要な介護サービスの契約ができなかったりするリスクがあります。そうした方々を保護し、支援するために作られたのが成年後見制度です。

この制度には「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類があります。法定後見制度は、すでに判断能力が低下してから家庭裁判所に申し立てて後見人等を選任してもらう制度です。一方、任意後見制度は、判断能力がしっかりしているうちに、将来に備えてあらかじめ支援者を決めておく制度です。


これまでの成年後見制度の問題点

これまでの法定後見制度には、大きく分けて3つの類型がありました。判断能力の程度に応じて「後見」「保佐」「補助」に分かれており、それぞれ後見人等の権限が異なっていました。

しかし、この制度には多くの問題点が指摘されてきました。

まず、一度制度を利用すると途中でやめられないという問題です。たとえば親御さんの遺産相続の手続きのためだけに後見を申し立てたとします。相続手続きは数か月で終わるかもしれません。しかし、後見制度は相続が終わっても継続します。本人が亡くなるまで、あるいは判断能力が回復するまで続くのです。

次に、必要以上に権限を奪われてしまうという問題です。たとえば不動産の売却という特定の手続きのために後見人が必要だったとしても、後見類型を利用すると、日常的な預貯金の管理まで後見人の管理下に置かれてしまいます。本人の意思や自己決定権が、必要以上に制限されてしまうのです。

さらに、家庭裁判所が専門職後見人(弁護士や司法書士など)を選任するケースが多く、親族が後見人になれないことも少なくありません。そして専門職後見人には報酬を支払い続ける必要があり、経済的な負担も大きくなります。

こうした「使い勝手の悪さ」が、制度の利用を躊躇させる要因となっていました。


今回の改正で何が変わるのか

今回の民法改正案では、これらの問題点を解決するため、大きく2つの改正が行われます。

第一に、3類型の一本化です。これまでの「後見」「保佐」「補助」という3つの類型を廃止し、「補助」に一本化します。補助は3類型の中で最も本人の意思を尊重する類型で、後見人等の権限も限定的です。つまり、本人の判断能力をできるだけ残しながら、必要な部分だけをサポートする方向に大きく舵を切るわけです。

第二に、オーダーメード型の支援です。認知症の方が特定の事項についてだけ代理してもらえるようにします。たとえば「不動産の売却だけ」「遺産分割協議への参加だけ」といった形で、必要な範囲に限定して支援を受けられるようになります。そして、その用件が済めば制度の利用を終了できるようになります。

これにより、本人の自己決定権を最大限尊重しながら、必要な場面でピンポイントの支援を提供できる、柔軟な制度に生まれ変わります。


80代の親を持つ40代のあなたへ:この改正が持つ意味

80代の親御さんをお持ちの40代の皆さんにとって、この改正は非常に大きな意味を持ちます。

統計的に見ると、80代は認知症の発症リスクが高まる年代です。85歳以上では約4人に1人が認知症と言われています。つまり、多くの方が「いつ親が認知症になってもおかしくない」状況にあるのです。

親御さんが認知症になると、さまざまな法律上の問題が発生します。銀行口座が凍結され、生活費や施設の費用を引き出せなくなる。不動産を売却して介護費用に充てようとしても、本人に判断能力がないため売却できない。相続が発生しても、認知症の相続人がいると遺産分割協議ができない。こうした問題は、決して他人事ではありません。

これまでは、こうした問題に対処するために成年後見制度を利用するしかありませんでした。しかし前述のとおり、制度の重さや使いづらさから、利用をためらう方も多かったのです。

今回の改正により、もっと気軽に、もっと柔軟に、必要な時だけ制度を利用できるようになります。これは、認知症の親御さんを支える家族にとって、大きな安心材料となります。


今から準備しておくべきこと

この改正法案は今国会での成立を目指しており、施行は公布から2年6カ月以内とされています。つまり、実際に新しい制度が始まるまでには、まだ2年以上の時間があります。この期間を有効に使って、今から準備を進めることが大切です。

まず第一に、親御さんと話し合いをすることです。認知症や財産管理の話題は、なかなか切り出しにくいものです。でも、元気なうちに話し合っておくことが、将来の安心につながります。

「もし認知症になったら、財産管理はどうしたい?」「誰に任せたい?」「どんな支援を受けたい?」こうした質問を、日常の会話の中で自然に投げかけてみてください。正月やお盆、親の誕生日など、家族が集まる機会を活用するのも良いでしょう。

第二に、財産の棚卸しをしておくことです。親御さんがどんな財産を持っているのか、把握できているでしょうか。預貯金はどの銀行にあるのか、不動産はどこにあるのか、株式や保険はあるのか。財産の全体像を把握しておくことは、いざという時の対応をスムーズにします。

親御さんと一緒に、財産のリストを作成してみてください。通帳や権利証、保険証券などの保管場所も確認しておきましょう。デジタル資産(ネット銀行やオンライン証券など)がある場合は、IDやパスワードの管理方法についても話し合っておく必要があります。

第三に、任意後見制度の活用を検討することです。今回改正されるのは「法定後見制度」ですが、「任意後見制度」という選択肢もあります。任意後見制度は、判断能力がしっかりしているうちに、将来に備えて支援者(任意後見人)を決めておく制度です。

任意後見制度の最大のメリットは、本人が自分で後見人を選べることです。信頼できる家族や専門家を指名できます。そして、どの範囲の支援を任せるかも、契約で自由に決められます。法定後見制度よりも、本人の意思がより尊重される仕組みなのです。

親御さんの判断能力がしっかりしている今だからこそ、任意後見契約を結んでおくという選択肢を、ぜひ検討してみてください。

第四に、遺言書の作成を勧めることです。認知症になると、遺言書を作成することができなくなります。判断能力があるうちに遺言書を作成しておけば、相続時のトラブルを防ぐことができます。

遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。この中で最も確実なのは公正証書遺言です。公証役場で公証人が作成するため、形式的な不備で無効になる心配がありません。原本も公証役場で保管されるため、紛失や改ざんの心配もありません。

親御さんに遺言書の作成を勧める際は、「家族のために」という視点で話すと、受け入れてもらいやすいでしょう。「子どもたちが相続で揉めないように」「あなたの想いをしっかり形に残しておきたい」といった伝え方が効果的です。

第五に、専門家に相談することです。成年後見制度や相続の問題は、法律的に複雑な部分も多くあります。自分たちだけで判断せず、早めに専門家に相談することをお勧めします。

相続遺言専門の司法書士や弁護士、税理士などに相談すれば、それぞれのご家庭の状況に応じた最適なアドバイスが得られます。初回相談は無料という専門家も多いので、気軽に問い合わせてみてください。


新制度の注意点と今後の動向

今回の改正は、制度をより使いやすくするための大きな一歩です。しかし、すべての問題が解決されるわけではありません。

たとえば、銀行口座の扱いについては、まだ詳細が明らかになっていません。新しい制度では「特定の事項についてだけ代理してもらえる」とされていますが、日常的な預貯金の引き出しはどうなるのか、詳細な運用ルールは今後示されることになります。

また、専門職後見人の報酬の問題も残ります。オーダーメード型になり、利用期間が短くなることで、報酬負担は軽減される可能性があります。しかし、短期間でも専門家に依頼すれば、それなりの費用がかかることに変わりはありません。

さらに、新制度が実際に使いやすいものになるかは、運用次第という面もあります。家庭裁判所の審査がどの程度厳格になるのか、必要な書類や手続きはどの程度簡素化されるのか、こうした実務的な部分は、施行後の運用を見守る必要があります。

今後、政府は今国会での法案成立を目指しています。成立すれば、公布から2年6カ月以内に施行されます。おそらく2028年から2029年頃には、新しい制度がスタートすることになるでしょう。

それまでの間に、詳細な運用ルールや手続きの流れが示されます。新しい情報が出てきたら、専門家のアドバイスを受けながら、適切に対応していくことが大切です。


まとめ:今できることから始めよう

成年後見制度の改正は、高齢社会の日本にとって必要不可欠な改革です。80代の親を持つ40代の皆さんは、まさにこの制度の恩恵を受ける世代です。

大切なのは、「いざという時」が来る前に、できる準備を進めておくことです。親御さんとの話し合い、財産の把握、任意後見や遺言書の検討。こうした準備は、決して難しいものではありません。一つひとつ、できることから始めていけば良いのです。

認知症は誰にでも起こりうることです。でも、適切な備えがあれば、本人も家族も安心して過ごせます。この改正を機に、ご家族で「もしもの備え」について、ぜひ話し合ってみてください。

そして、わからないことや不安なことがあれば、遠慮なく専門家に相談してください。相続遺言専門の司法書士として、私たちは皆さんの不安に寄り添い、最適な解決策をご提案いたします。

大切な親御さんの人生の最終章を、安心して穏やかに過ごせるように。今から、一歩ずつ準備を始めていきましょう。

記事URL:
https://news.yahoo.co.jp/articles/14361f7437af023bf6b868dc16beeacbfec0edf1


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