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遺言書のお話

2026年05月17日

親が80代になったら知っておきたい!エンディングノートとデジタル相続の基礎知識

大阪の遺言書作成サポート司法書士ゆいごんのしげもり

はじめに

相続遺言専門の司法書士として、私は日々多くのご家族の相続手続きをサポートしています。その中で近年特に増えているのが、「親のデジタル資産がどこにあるかわからない」「スマホのパスワードが解除できず、重要な情報にアクセスできない」といった相談です。

今回は、Yahoo!ニュースで話題になった「エンディングノートは全部埋める必要はない」という終活アドバイザーの言葉をきっかけに、80代の親を持つ40代の方に向けて、今すぐ始められる相続準備とエンディングノートの活用法をお伝えします。

エンディングノートとは何か?遺言書との違い

エンディングノートと遺言書は、しばしば混同されますが、その性質は大きく異なります。

遺言書は法的拘束力を持つ正式な文書です。自筆証書遺言や公正証書遺言といった形式があり、書き方には厳密なルールがあります。一方、エンディングノートには法的拘束力はありません。だからこそ、何度でも書き直せますし、形式も自由です。

エンディングノートの役割は、ご本人の希望や大切な情報を家族に伝えることです。どんな葬儀にしたいか、延命治療の希望、財産の所在、交友関係、デジタル資産の情報など、法的効力は不要だけれど家族に伝えたいことを記録しておくツールなのです。

全部埋める必要はない!まずは書きやすいところから

記事で紹介された終活アドバイザーの櫻木さんは「全ての項目を埋める必要はない。小さい頃の思い出ややりたいことなど取り組みやすいものから書けばいい」とおっしゃっています。これは本当にその通りです。

エンディングノートを買ったものの、項目が多すぎて挫折してしまう方は少なくありません。自分史、家族のこと、財産のこと、医療のこと、葬儀のこと…確かにやることは多いです。

しかし、完璧を目指す必要はありません。まずは「書きやすいこと」「楽しいこと」から始めましょう。

たとえば「これからやりたいこと」のページ。旅行に行きたい場所、会いたい人、食べたいもの。こういったページは、終わりを意識するのではなく、むしろこれからを楽しむための「予定帳」として機能します。

書いていくうちに、「できていること」「わかっていること」「手をつけていないこと」が明確になってきます。そうしたら、少しずつ重要な項目に取り組んでいけばいいのです。

デジタル遺産が急増中!相続の新しい課題

近年、相続の現場で急速に問題化しているのが「デジタル遺産」です。

デジタル遺産とは、インターネット上やデジタル機器内に存在する資産や契約のことです。具体的には次のようなものがあります。

ネット銀行の預金口座
ネット証券の株式や投資信託
仮想通貨のウォレット
動画配信サービス、音楽配信サービスなどのサブスクリプション
通販サイトの定期購入契約
クレジットカード情報
SNSアカウント
写真や動画などのデジタルデータ

これらはすべて、パスワードで保護されています。そして多くの場合、ご本人しかそのパスワードを知りません。

実際の相続手続きで何が起こるか

私が担当したある事例では、80代の父親が突然亡くなり、息子さんが相続手続きを進めようとしたところ、父親のスマートフォンにロックがかかっていて開けませんでした。

スマホの中には、ネット銀行のアプリ、証券会社のアプリ、そして複数のサブスクサービスが入っていました。しかしパスワードがわからないため、財産の全容を把握することができず、手続きが大幅に遅れてしまいました。

また別のケースでは、亡くなった母親が複数の動画配信サービスと健康食品の定期購入を契約していたことが、数ヶ月後にクレジットカードの明細でわかりました。すでに不要な料金が数万円も引き落とされていたのです。

デジタル資産リストを今すぐ作るべき理由

こうした問題を防ぐために、今すぐ作っていただきたいのが「デジタル資産リスト」です。

最低限、次の情報を整理しておきましょう。

使用しているデバイス
スマートフォン、パソコン、タブレットの機種とパスワード、PINコード。顔認証や指紋認証だけでなく、バックアップ用のパスワードも記録しておきましょう。

金融機関の口座情報
銀行名、支店名、口座番号だけでなく、ネットバンキングのログインIDとパスワードも必要です。特にネット専業銀行は通帳がないため、情報がなければ存在自体に気づかない可能性があります。

証券会社と投資口座
証券会社名、口座番号、ログイン情報。特にネット証券は紙の報告書が来ない設定にしている方も多く、情報がなければ発見が困難です。

仮想通貨
取引所名、ウォレットの種類、秘密鍵の保管場所。仮想通貨は特に、秘密鍵を失うと永久に取り出せなくなります。

サブスクリプションサービス
動画配信、音楽配信、オンラインストレージ、新聞、雑誌など。サービス名、支払い方法、解約方法を記録しておきましょう。

通販の定期購入
健康食品、化粧品、日用品など。意外と見落とされがちですが、解約しないと延々と商品が届き、料金が引き落とされ続けます。

SNSアカウント
Facebook、X、Instagram、LINEなど。アカウントの存在とログイン情報、死後の扱い(削除してほしいか、残してほしいか)の希望も書いておくとよいでしょう。

パスワード管理の重要な注意点

ただし、パスワードをエンディングノートに直接書くのはセキュリティ上のリスクがあります。記事でも触れられていますが、マイナンバーなど重要な数字は別紙に書き、保管場所を信頼できる家族と共有するのが賢明です。

パスワード管理アプリを使っている場合は、そのマスターパスワードだけを安全な方法で共有しておく方法もあります。

50代60代の今だからこそできること

記事では「50〜60代で取りかかれば、70〜90代の親に聞いておきたいことにも気付けるメリットがある」と指摘されています。これは非常に重要なポイントです。

自分自身がエンディングノートを書いてみると、「あれ、これって親にも聞いておかなきゃ」ということに自然と気づきます。

たとえば
親の交友関係を把握しているか?
葬儀の希望は聞いているか?
財産がどこにどれくらいあるか知っているか?
かかりつけの病院や服用している薬を把握しているか?
延命治療についての希望を聞いたことがあるか?

これらは元気なうちでないと聞きにくい話題です。いざ病気になってから、認知症が進行してから聞こうとしても、本人の本当の希望を聞き出すことは難しくなります。

親にエンディングノートを書いてもらう上手な誘い方

「親にエンディングノートを書いてほしいけど、どう切り出せばいいかわからない」という相談をよく受けます。

確かに「そろそろ終活しなよ」と直接言うのは、親子関係によっては難しいかもしれません。

そこでおすすめなのが「自分も書くから一緒にやろう」という誘い方です。

「最近、エンディングノートっていうのが流行ってるみたいで、私も書いてみようと思ってるんだけど、一緒にやってみない?わからないことあったら教えてほしいし」

こんな風に、自分が主体で、親にはアドバイザーとして参加してもらう形を取ると、抵抗感が減ります。

また、親の誕生日や敬老の日などに、エンディングノートをプレゼントするのも一つの方法です。その際は「これからも元気で長生きしてほしいから、もしもの時に困らないように」という気持ちを伝えましょう。

エンディングノートの入手方法

エンディングノートは様々な方法で入手できます。

市販品
書店で数百円から数千円で購入できます。デザインや内容が充実しており、書きやすいものが多いです。

自治体の無料配布
多くの自治体が独自のエンディングノートを作成し、無料で配布しています。お住まいの市区町村の窓口やホームページで確認してみましょう。

インターネットでダウンロード
無料でダウンロードできるエンディングノートも多数あります。PDF形式やExcel形式など、自分で編集できるものもあります。

どれを選んでも構いません。大切なのは「完璧に埋めること」ではなく「書き始めること」です。

相続手続きをスムーズにするために今できること

エンディングノートの作成以外にも、今からできる相続準備があります。

財産目録の作成
不動産、預貯金、有価証券、保険、負債など、財産の全体像を一覧にしておきましょう。これがあるだけで、相続手続きは格段にスムーズになります。

相続人の確認
誰が相続人になるのかを確認しておきましょう。兄弟姉妹の有無、子どもの人数、離婚歴がある場合は前の配偶者との間の子どもの存在なども重要です。

遺言書の検討
特定の人に多く財産を残したい、事業を特定の子どもに継がせたい、相続人以外に財産を渡したいなどの希望がある場合は、遺言書の作成が必要です。

生前贈与の計画
相続税対策として生前贈与を検討している場合は、計画的に行う必要があります。2024年からは贈与のルールも変更されていますので、専門家に相談することをおすすめします。

家族での話し合い
何より大切なのは、家族でオープンに話し合うことです。親の希望、子どもの考え、それぞれの事情を共有することで、将来の相続トラブルを防ぐことができます。

認知症になる前にやっておくべきこと

80代の親御さんをお持ちの場合、認知症のリスクも考慮する必要があります。

認知症で判断能力が低下してしまうと、法律行為ができなくなります。つまり、遺言書を書くことも、生前贈与をすることも、不動産を売却することもできなくなるのです。

そうなる前に検討すべき制度があります。

任意後見制度
元気なうちに、将来判断能力が低下した時に誰に財産管理や身上監護をしてもらうかを契約で決めておく制度です。

家族信託
財産を信頼できる家族に託し、管理・処分してもらう仕組みです。認知症になった後も、信託された財産については受託者が管理できます。

これらの制度は、判断能力があるうちにしか利用できません。「まだ大丈夫」と先延ばしにせず、元気なうちに検討しておくことが重要です。

司法書士に相談するメリット

エンディングノートの作成は自分でできますが、その内容を法的に有効な形にしたい場合や、相続対策を本格的に進めたい場合は、専門家のサポートが有効です。

司法書士は相続登記や遺言書作成の専門家です。以下のようなサポートができます。

エンディングノートの内容確認と法的アドバイス
遺言書の作成サポート
相続登記の手続き
生前贈与の登記
家族信託の設計と契約書作成
任意後見契約の作成

特に相続遺言専門の司法書士は、多くの相続事例を見てきた経験から、「こういうケースではこんなトラブルが起きやすい」という予測に基づいたアドバイスができます。

まとめ エンディングノートは未来の予定帳

記事で紹介された櫻木さんの言葉が印象的です。

「ノートは終わりの準備ではなく、人生を後悔なく過ごすための"少し未来の予定帳"。楽しみを想像しながら記入して」

エンディングノートは決して縁起の悪いものではありません。むしろ、これからの人生をより豊かに、より安心して過ごすためのツールなのです。

80代の親御さんをお持ちの40代の皆さん、今がそのタイミングです。

完璧を目指さず、できることから少しずつ。親御さんとの会話を楽しみながら、エンディングノートを通じて家族の絆を深めていってください。

そして、法的な手続きや専門的な相続対策が必要になったら、いつでも私たち司法書士にご相談ください。

元気なうちに、家族で話す。これが最大の相続対策です。

参考記事
https://news.yahoo.co.jp/articles/055368ad20e0b36608e67b351fae13fed23b894c


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