

相続トラブルは富裕層だけの問題ではない
「相続争い」と聞いて、あなたは何を思い浮かべますか?
豪邸に住む資産家一族が、何億円もの遺産を巡って骨肉の争いを繰り広げる…そんなドラマのようなシーンを想像する方が多いのではないでしょうか。
しかし、現実はまったく違います。
最高裁判所の司法統計によれば、遺産分割事件の約8割は遺産総額5000万円以下の家庭で発生しています。さらに驚くべきことに、遺産1000万円以下のケースが全体の3割以上を占めているのです。
つまり、相続トラブルの主戦場は「普通の家庭」なのです。
Yahoo!ニュースで配信された記事「亡き両親も、草葉の陰で泣いている…数百万円の遺産で争い勃発」では、まさにこの問題が取り上げられています。
この記事を読んで、私は相続遺言専門の司法書士として、改めて多くの方にこの現実を知っていただきたいと強く感じました。
特に、80代の親御さんをお持ちの40代の皆さん。あなた方にとって、この問題は決して他人事ではありません。
なぜ「普通の家庭」ほど相続で揉めるのか
富裕層の相続では、複数の不動産、株式、預貯金など、分割できる財産が豊富にあります。そのため、相続人それぞれに適切な資産を配分しやすいのです。
一方、一般家庭の相続財産は限られています。多くの場合、「実家の不動産」と「数百万円程度の預貯金」だけです。
不動産は簡単には分けられません。3人兄弟で実家を3等分するわけにはいきませんよね。かといって、売却して現金化すれば、そこに住んでいた家族が家を失ってしまいます。
こうした「分けにくい財産」を巡って、相続人同士の利害が真っ向から対立するのです。
実際に起きている相続トラブルの事例
記事では、具体的な事例がいくつか紹介されています。
事例1:教育費の不公平を巡る争い
長男は高卒で働き始めたのに、次男は大学まで行かせてもらった。親が亡くなった後、長男は「自分は大学に行けなかった分、大学授業料に相当する金額を多く相続すべきだ」と主張。次男は「それは親の決断であり、自分の責任ではない」と反論。兄弟の関係は完全に破綻してしまいました。
事例2:介護負担を巡る争い
長男が親と同居し、10年以上介護を続けてきました。親が亡くなった後、次男が「実家が唯一の遺産なのだから、家を売って半分ずつ分けよう」と主張。長男は住む家を失う危機に直面し、「自分だけが介護してきたのに、何もしなかった弟と同じ取り分なんておかしい」と激怒。法廷闘争に発展しました。
これらの事例に共通しているのは、「法定相続分では解決できない感情的な対立」です。
民法は相続人に平等な権利を与えていますが、各家庭の個別事情までは考慮してくれません。だからこそ、トラブルが起きるのです。
法定相続分とは何か
遺言書がない場合、遺産は民法で定められた「法定相続分」に従って分割されます。
配偶者と子がいる場合:配偶者が2分の1、子が2分の1(子が複数いる場合は均等に分ける)
配偶者と親がいる場合:配偶者が3分の2、親が3分の1
配偶者と兄弟姉妹がいる場合:配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1
子のみの場合:子が全額相続(複数いる場合は均等に分ける)
注意すべきは、配偶者とは「法律上の配偶者」を指すという点です。事実婚のパートナーには相続権がありません。また、離婚していない限り、たとえ別居していても配偶者には相続権があります。
この法定相続分は、あくまで「標準的なルール」であり、各家庭の事情を反映したものではありません。
数百万円でも人生を左右する大金
富裕層にとって数百万円は、全体の財産から見れば一部に過ぎないかもしれません。
しかし、一般家庭にとって数百万円は人生を左右する大金です。
住宅ローンの返済、子どもの教育費、老後資金…40代の私たちにとって、数百万円があるかないかで人生設計が大きく変わります。
だからこそ、「たかが数百万円」では済まされないのです。
記事では、「きょうだいと一生口を利かなくなっても構わない」と考える人もいる、と指摘されています。それほどまでに、この金額は重要なのです。
親が元気な今こそ、遺言書を準備すべき理由
では、こうした悲劇を防ぐにはどうすればいいのでしょうか?
答えは明確です。親御さんが元気なうちに、きちんとした遺言書を作成しておくことです。
遺言書があれば、法定相続分にとらわれず、親御さんの意思に基づいて財産を分配できます。
たとえば、
「長男には、同居と介護の負担を考慮して実家と預金500万円を相続させる」
「次男には預金300万円を相続させる」
「長男が実家を相続する代わりに、次男に対して200万円を支払うこと」
このように具体的に記載しておけば、相続人全員が納得しやすくなります。
さらに、遺言書には「付言事項」を書くこともできます。これは法的効力はありませんが、親御さんの想いや分割方法の理由を伝える大切なメッセージです。
「長男へ。お前が長年私たちの面倒を見てくれたこと、本当に感謝している。だから実家はお前に継いでほしい」
「次男へ。お前は遠方で頑張っているが、いつも気にかけてくれてありがとう。少ないかもしれないが、この預金を受け取ってほしい」
こうした親の言葉があれば、たとえ相続分に差があっても、子どもたちは納得しやすくなります。
遺言書作成を先延ばしにしてはいけない理由
「親はまだ元気だから、もう少し後でいい」
「縁起でもない話は避けたい」
「親に遺言の話を切り出すのは気が引ける」
こうした理由で、遺言書の作成を先延ばしにする方が非常に多いのです。
しかし、それは非常に危険です。
なぜなら、認知症が進んでしまうと、遺言書を作成できなくなるからです。
遺言書は「遺言能力」がある状態で作成しなければなりません。遺言能力とは、遺言の内容を理解し、その結果として自分の財産がどのように処分されるかを判断できる能力のことです。
認知症が進行すると、この能力が失われてしまいます。その状態で作成された遺言書は無効とされる可能性が高いのです。
さらに、認知症になってからでは成年後見制度を利用する必要があり、財産管理に大きな制約が生じます。
80代の親を持つ40代のあなたが今すぐすべきこと
もしあなたが80代の親御さんをお持ちの40代なら、今がまさに行動すべきタイミングです。
まずは、親御さんと「相続」について話し合うことから始めましょう。
「お父さん、お母さん、将来のことで少し相談したいことがあるんだけど」
最初は話しにくいかもしれません。でも、この会話が家族の未来を守ります。
次に、専門家に相談しましょう。
相続遺言専門の司法書士なら、あなたの家族の状況に合わせた最適な遺言書の作成をサポートできます。
遺言書には主に3種類あります。
自筆証書遺言:本人が全文を自筆で書く。費用は安いが、形式不備で無効になるリスクがある。
公正証書遺言:公証役場で公証人が作成する。最も確実で安全。費用は数万円程度。
秘密証書遺言:内容を秘密にしつつ、存在を証明する。あまり使われない。
私は司法書士として、公正証書遺言をお勧めしています。多少費用はかかりますが、無効になるリスクがほとんどなく、原本が公証役場に保管されるため紛失の心配もありません。
相続は「争続」にしない
親御さんが亡くなった後、遺産を巡って兄弟姉妹が争う姿を、親御さんは望んでいるでしょうか?
絶対に望んでいません。
記事のタイトルにもあるように、「亡き両親も、草葉の陰で泣いている」のです。
相続を「争続」にしないために、私たち専門家がいます。
相続遺言の問題は、法律の知識だけでなく、家族の感情や事情を深く理解することが必要です。だからこそ、経験豊富な専門家に相談することが大切なのです。
もし少しでも不安や疑問があれば、どうぞお気軽にご相談ください。初回相談は無料でお受けしています。
大切なご家族が笑顔で過ごせる未来を、ご一緒に作りましょう。
まとめ:今すぐ行動を
相続トラブルは富裕層だけの問題ではありません。むしろ、遺産5000万円以下の一般家庭でこそ多発しているのです。
数百万円の遺産でも、それが人生を左右する大金である以上、争いは避けられません。
しかし、親御さんが元気なうちに遺言書を準備しておけば、こうした悲劇は防げます。
80代の親を持つ40代のあなた。今がまさに行動すべき時です。
「まだ大丈夫」ではなく、「今だからできる」のです。
参考記事:https://news.yahoo.co.jp/articles/dc28a20920061fb586b72a6a0898f066b2ced3e7