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遺言書のお話

2026年06月07日

養子縁組と生前贈与で相続対策をする前に知っておくべき2024年税制改正の重要ポイント

大阪の遺言書作成サポート司法書士ゆいごんのしげもり

相続税対策として「養子縁組」と「生前贈与」を組み合わせる手法は、長年にわたり多くの家庭で活用されてきました。しかし、2024年度の税制改正により、その前提条件が大きく変化しています。従来の常識のまま進めてしまうと、節税効果どころか税務リスクや家族間トラブルを招く可能性があります。本記事では、相続遺言専門の司法書士として、80代の親を持つ40代の方々に向けて、最新の制度と実務上の注意点を詳しく解説します。


養子縁組は節税手段ではなく家族関係を形成する民法上の制度

養子縁組と聞くと、多くの方が「相続税対策」という言葉を連想されるかもしれません。確かに、養子を迎えることで法定相続人が増え、相続税の基礎控除額や生命保険の非課税枠が拡大するという効果はあります。

しかし、養子縁組は本来、税金を減らすための制度ではありません。民法上、養子縁組は「親子関係を形成する行為」であり、養子は実子と同等の法定相続人としての地位を得ます。つまり、遺留分請求権や遺産分割協議への参加権など、相続に関するすべての権利を持つことになります。

ここで重要なのは、税務メリットだけを目的に養子縁組を行うことのリスクです。最高裁平成29年1月31日判決では、「節税目的であっても直ちに養子縁組を無効とすることはできない」としつつも、「実質的に親子関係を形成する意思が認められない場合には無効となり得る」と判示されています。

つまり、税務署や裁判所は「節税目的かどうか」ではなく、「実態として親子関係が成立しているか」「合理的な背景があるか」を重視して判断するということです。


養子縁組が引き起こす相続トラブルの実例

相続の現場では、養子縁組が原因で家族間の争いに発展するケースが少なくありません。

たとえば、長男の配偶者を養子にして相続税対策を行ったケースでは、その後に親と長男夫婦の関係が悪化し、相続発生時に養子である配偶者が遺留分を主張して家族が分裂したという事例があります。

また、孫を養子にした場合、実子である子どもと孫が同じ相続順位となり、遺産分割協議が複雑化することもあります。特に孫がまだ未成年の場合、特別代理人の選任が必要になるなど、手続き面でも負担が増えます。

養子縁組を検討する際は、税金面だけでなく、将来的な家族関係や相続手続きへの影響を十分に考慮することが不可欠です。


養子縁組と生前贈与はタイミングが命

養子縁組と生前贈与を組み合わせた相続対策において、最も注意すべきポイントが「タイミング」です。

税務上、贈与が行われた時点での親族関係によって、課税関係が決定されます。たとえば、養子縁組を行う前に生前贈与を実施した場合、その贈与は「親族外への贈与」として扱われ、暦年課税の対象となります。

その後、養子縁組を行い、相続時精算課税制度を選択したとしても、過去の贈与を遡って精算課税の対象に含めることはできません。この線引きを誤ると、申告誤りや追徴課税につながる可能性があります。

逆に、養子縁組後に贈与を行った場合は、親族間贈与として相続時精算課税を選択できるため、税務上有利になるケースがあります。このように、養子縁組と贈与の順序は、税務戦略において極めて重要な要素となります。


2024年税制改正で相続時精算課税制度はどう変わったか

2024年度の税制改正により、相続時精算課税制度に大きな変化がありました。最も注目すべきは、年間110万円の基礎控除が新設されたことです。

従来の相続時精算課税制度では、2500万円までの特別控除があり、一括で大きな財産を移転する際に有利とされていました。しかし、一度この制度を選択すると、その後の贈与はすべて相続財産に加算されるため、柔軟性に欠けるという課題がありました。

2024年改正により、相続時精算課税を選択した場合でも、年間110万円以下の贈与については申告不要かつ相続財産への加算対象外となりました。つまり、「一括移転型」から「一括移転と年次移転を併用できるハイブリッド型」へと制度の性格が変化したのです。

これにより、たとえば孫への教育資金支援や生活費の援助など、少額の贈与を毎年継続的に行うことが可能になり、柔軟な資産移転が実現しやすくなりました。

ただし、2500万円を超える部分については従来通り贈与時点で20パーセントの贈与税が課税され、最終的には相続時に精算される基本構造は維持されています。


暦年課税と相続時精算課税の選択基準

生前贈与を行う際、多くの方が悩まれるのが「暦年課税」と「相続時精算課税」のどちらを選ぶべきかという点です。

暦年課税は、年間110万円までの基礎控除があり、これを超える部分に累進税率で贈与税が課税される制度です。相続発生前7年以内の贈与は相続財産に加算されますが、それ以前の贈与は相続税の対象外となります。

一方、相続時精算課税は、2500万円までの特別控除と年間110万円の基礎控除があり、贈与時の評価額で相続財産に加算される仕組みです。将来値上がりが見込まれる財産を早期に移転したい場合に有利です。

どちらを選ぶべきかは、財産の種類、金額、家族構成、今後の生活設計などによって異なります。一般的には、以下のような判断基準があります。

暦年課税が向いているケース:毎年少額ずつ計画的に贈与を続けたい、相続までに十分な時間がある、財産の評価額が安定している

相続時精算課税が向いているケース:まとまった財産を早期に移転したい、将来値上がりが見込まれる不動産や株式を贈与したい、相続発生が近い


生前贈与加算ルールの7年延長で何が変わったか

2024年の税制改正では、もうひとつ重要な変更がありました。それが「生前贈与加算ルール」の期間延長です。

従来は相続発生前3年以内の贈与が相続財産に加算されていましたが、2024年以降は段階的に延長され、最終的には7年以内の贈与が加算対象となります。

この変更により、相続発生直前の駆け込み贈与による節税効果が大幅に減少しました。逆に言えば、早期から計画的に贈与を行うことの重要性が増したということです。

特に80代の親を持つ40代の方にとっては、「まだ早い」と先延ばしにせず、今から計画的に準備を始めることが重要になります。


親の判断能力があるうちにやるべきこと

相続対策において最も重要なのは、親御さんの判断能力がしっかりしている段階で準備を進めることです。認知症などで判断能力が低下してしまうと、遺言書の作成や贈与契約、養子縁組といった法律行為ができなくなります。

80代の親を持つ40代の方々にとって、今はまさに「対策を始める最適なタイミング」です。具体的には、以下のようなことを検討すべきです。

遺言書の作成:親の意思を明確にし、将来の紛争を防ぐ
財産の棚卸し:不動産、預貯金、有価証券などすべての財産をリスト化
生前贈与の計画:暦年贈与や相続時精算課税の活用を検討
任意後見契約:将来の判断能力低下に備えた準備
家族会議の実施:相続についての考えを家族で共有

特に遺言書は、自筆証書遺言保管制度や公正証書遺言を活用することで、紛争リスクを大幅に減らすことができます。


相続対策は家族の未来を設計すること

私が司法書士として多くの相続案件に携わってきた経験から言えるのは、「相続対策とは税金を減らすことではなく、家族の未来を設計すること」だということです。

どれだけ税務上有利なスキームを組んでも、家族が納得できなければ意味がありません。相続発生後に「こんなはずじゃなかった」と後悔する家族を数多く見てきました。

大切なのは、次の3つの視点です。

家族が納得できる分割方法になっているか:誰が何を相続するのか、なぜそうするのかを明確にする
将来の紛争リスクをどう回避するか:遺留分対策や代償金の準備など、トラブルの芽を事前に摘む
親の想いをどう実現するか:財産だけでなく、家族への想いや価値観を形にする


専門家に相談するメリット

相続対策は、税法、民法、登記実務など多岐にわたる専門知識が必要です。インターネットや書籍で情報を得ることはできますが、個々の家庭の事情に合わせた最適解を見つけるには、専門家のサポートが不可欠です。

司法書士は、相続登記や遺言書作成、家族信託など、相続に関する幅広い業務を扱う国家資格者です。税理士、弁護士、行政書士などとも連携しながら、ワンストップで相続対策をサポートできます。

特に養子縁組と生前贈与を組み合わせた複雑なスキームを検討する場合は、税務リスクや法的リスクを正確に把握するために、早い段階で専門家に相談することをお勧めします。


まとめ

2024年の税制改正により、相続対策の環境は大きく変化しました。養子縁組と生前贈与を組み合わせた従来の手法も、タイミングや制度の理解を誤れば、思わぬリスクを招きます。

80代の親を持つ40代の方々にとって、今は「準備を始める最後のタイミング」かもしれません。親の判断能力がしっかりしている今だからこそ、できることがあります。

相続対策は一朝一夕にできるものではありません。家族でしっかり話し合い、専門家のアドバイスを受けながら、時間をかけて準備を進めていくことが大切です。

あなたの家族にとって最善の相続対策を、今から一緒に考えていきましょう。

プロフィール:繁森一徳
(司法書士しげもり法務事務所代表司法書士)
岡山県出身。岡山大安寺高等学校卒業、関西学院大学法学部卒業。現在は、大阪市の天王寺・上本町を拠点に、相続・遺言・生前贈与・民事信託(家族信託)に特化した法的支援を展開。地域に根差した活動も行っており、天王寺区や東成区などの各区役所・区民センターなどで、無料相談会の開催実績多数。

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参考記事
https://news.yahoo.co.jp/articles/4a77a643ec0622793e2496d97250e27c7a2766ed


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