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遺言書のお話

2026年06月11日

親が認知症になったら相続手続きはどうなる?40代が知っておくべき相続と認知症の現実

大阪の遺言書作成サポート司法書士ゆいごんのしげもり

はじめに

80代の親を持つ40代の皆さん、突然ですが「親の相続」について考えたことはありますか?

「まだ元気だから大丈夫」「縁起でもない」と思われるかもしれません。でも、ちょっと待ってください。今、日本では高齢化と共に認知症の方が急増しており、相続の現場でも「認知症と相続」の問題が非常に多くなっているのです。

2025年には65歳以上の5.4人に1人が認知症になると予測されています。これはもう他人事ではありません。

今回は、実際に相続の現場で増えている「親が認知症になった場合の相続手続き」について、司法書士の視点から分かりやすく解説します。

実際に増えている相談「父が亡くなり、母が認知症。実家を相続できますか?」

相続の相談窓口で、最近こんなご相談が本当に増えています。

「父が亡くなりました。実家を相続したいのですが、母が認知症と診断されています。手続きはどうすればいいのでしょうか?」

相続人は認知症のお母様と、お子様が2人。遺言書はありません。子供のうち1人は遠方に住んでおり、実家の近くに住んでいるもう1人が実家を相続したいと考えています。

一見、シンプルなケースに思えますが、実はここに大きな問題が潜んでいます。

認知症の親がいると遺産分割協議ができない理由

通常、遺言書がない場合には「遺産分割協議」を行います。これは相続人全員で話し合って、誰がどの財産を相続するかを決める手続きです。

しかし、認知症の方がいる場合、この遺産分割協議ができません。

なぜなら、認知症の程度にもよりますが、意思能力が無いと判断されると法律行為ができなくなってしまうからです。

意思能力とは、自分の行為の結果を判断できる精神的な能力のことです。認知症が進行すると、この意思能力が失われ、契約などの法律行為が無効となる可能性があります。

遺産分割協議も法律行為の一つですから、意思能力のない方は参加できないのです。

法定相続分での相続登記はできるがおすすめしない理由

では、認知症の親がいる場合、まったく相続手続きができないのかというと、そうではありません。

相続人全員の名義にする、つまり法定相続分での共有登記であれば可能です。

例えば、母が2分の1、子供2人がそれぞれ4分の1ずつといった割合で共有名義にすることはできます。

しかし、これはあまりおすすめできません。理由は以下の通りです。

理由1 認知症の母が共有者の1人になるため自由に処分ができない

不動産を売却する場合、共有者全員の同意が必要です。しかし、認知症のお母様は意思能力がないため、売却の意思表示ができません。

つまり、実家を売りたくても売れない状況になってしまいます。

理由2 共有者の1人が亡くなった場合、その持分に対してさらに相続が発生し権利関係が複雑になる

例えば、子供の1人が亡くなった場合、その持分に対してさらに相続が発生します。その子供に配偶者や子供がいれば、その方々が新たな共有者になります。

こうして、どんどん共有者が増えていき、権利関係が複雑になっていくのです。将来、不動産を処分したいと思ったときに、非常に困難な状況になります。

成年後見人を付ければ遺産分割協議ができる

では、どうすればいいのでしょうか?

1つの解決策が「成年後見人」を付けることです。

成年後見人とは、認知症などで判断能力が不十分な方の代わりに、契約などの法律行為を行ったり、財産を管理したりする人のことです。

家庭裁判所に申し立てを行い、裁判所が適任者を選びます。親族が選ばれることもありますし、司法書士や弁護士などの専門家が選ばれることもあります。

成年後見人が付けば、その後見人がお母様の代わりに遺産分割協議に参加できるため、特定の相続人への名義変更が可能になります。

成年後見人制度のデメリットも理解しておく

ただし、成年後見人制度にはデメリットもあります。申し立てる前に、以下の点をしっかり理解しておく必要があります。

デメリット1 お母様が亡くなるまで成年後見人が付く

成年後見人は、一度選任されると、原則として本人が亡くなるか判断能力が回復するまで続きます。相続手続きが終わったからといって、やめることはできません。

デメリット2 成年後見人に対して報酬が発生する

専門家が後見人に選ばれた場合、毎月報酬が発生します。金額は財産の額などによって異なりますが、月2万円から6万円程度が一般的です。

この報酬は、お母様の財産から支払われます。長期間になると、かなりの金額になることもあります。

デメリット3 お母様に不利になる遺産分割協議はできない

成年後見人は、本人の利益を守るために活動します。ですから、お母様に不利になるような遺産分割協議はできません。

例えば、「お母様の相続分をゼロにして、すべて子供が相続する」といった内容は認められません。

お母様が法定相続分を確保できる内容でなければ、遺産分割協議は成立しないのです。

相続登記の義務化と正当な理由

2024年4月から相続登記が義務化されました。不動産を相続したことを知った日から3年以内に登記をしないと、10万円以下の過料が科される可能性があります。

ただし、正当な理由があれば過料は課されない予定です。

「相続人に認知症の方がいて遺産分割協議ができない」というケースは、正当な理由に該当する可能性があります。

ですから、すぐに結論を出す必要はありません。しばらく様子を見る、という選択肢もあります。

ただし、放置しすぎると、さらに相続が発生して権利関係が複雑になる可能性もあるため、専門家に相談しながら慎重に判断することが大切です。

固定資産税は相続登記をしなくてもかかる

よく誤解されるのですが、相続登記をしなくても固定資産税はかかります。

相続登記をしていなくても、市町村は相続人代表者を決めて、その方に固定資産税を請求します。

「登記しなければ税金もかからない」というわけではないので、注意してください。

最善の解決策は生前の遺言書作成

ここまで、親が認知症になった後の対応について説明してきました。

しかし、実は最善の解決策は「事前の準備」です。

具体的には、親が元気なうちに遺言書を作成しておくことです。

遺言書があれば、相続人の中に認知症の方がいても、遺産分割協議をする必要がありません。遺言書の内容に沿って、相続手続きを進めることができます。

遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類がありますが、最もおすすめなのは公正証書遺言です。

公正証書遺言は、公証役場で公証人が作成するため、形式的な不備がなく、紛失や改ざんの心配もありません。また、家庭裁判所での検認手続きも不要です。

40代の今だからこそ、親と話し合いを

「親に遺言書を書いてもらうなんて、縁起でもない」と思われるかもしれません。

でも、これは決して不吉なことではありません。家族を守るための大切な準備なのです。

私たち40代は、親の老いと向き合い始める世代です。親はまだ元気かもしれませんが、確実に高齢になっています。

今はまだ、親子で冷静に話し合いができる時期です。関係性も良好な方が多いでしょう。

でも、認知症が進行してからでは、もう話し合いはできません。親の本当の希望を聞くこともできなくなってしまいます。

だからこそ、今のうちに少しずつ、将来のことを話してみませんか?

「もし何かあったら、どうしてほしい?」
「財産のことで、兄弟が揉めないようにしたいよね」

そんな会話から始めてみるのもいいでしょう。

専門家への相談も選択肢の1つ

「自分たちだけで話すのは難しい」という場合は、司法書士などの専門家に相談するのも1つの方法です。

専門家が入ることで、感情的にならず客観的に話し合いができることもあります。また、法律的に適切な方法をアドバイスしてもらえます。

相続の相談は、多くの司法書士事務所で初回無料相談を実施しています。気軽に相談してみてください。

まとめ

親が認知症になってからでは、相続手続きが非常に難しくなります。

遺産分割協議ができない、成年後見人を付けるにもデメリットがある、共有名義にすると将来困る…。

こうした問題を避けるためには、親が元気なうちに遺言書を準備しておくことが最も有効です。

40代の私たちにできることは、「今」動くことです。

親との関係が良好な今だからこそ、少しずつ将来の話をしてみましょう。

相続は、財産の話であると同時に、家族の未来の話です。

あなたのご家族が、笑顔で次の世代へバトンを渡せますように。

何か不安なことや分からないことがあれば、お近くの司法書士に相談してみてください。一緒に最適な方法を考えましょう。

参考記事
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/b77870c8a9f1ea29d5a6e2bdc2c5d19cbffac840

プロフィール:繁森一徳
(司法書士しげもり法務事務所代表司法書士)
岡山県出身。岡山大安寺高等学校卒業、関西学院大学法学部卒業。現在は、大阪市の天王寺・上本町を拠点に、相続・遺言・生前贈与・民事信託(家族信託)に特化した法的支援を展開。地域に根差した活動も行っており、天王寺区や東成区などの各区役所・区民センターなどで、無料相談会の開催実績多数。

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