

2026年、成年後見制度が大きく変わります。「一度始めたら終わらない」「融通が利かない」といった従来の課題が見直され、より柔軟で使いやすい制度へと生まれ変わる見込みです。特に80代の親を持つ40代の方々にとって、この改正は「親の将来」を考える上で見逃せないポイントです。本記事では、相続遺言専門の司法書士の視点から、改正内容と今後の対策をわかりやすく解説します。
成年後見制度とは何か?基本をおさらい
成年後見制度は、認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分になった方を法的に保護・支援する仕組みです。家庭裁判所が選任した「成年後見人」が、本人に代わって財産管理や契約行為を行います。
高齢化が進む日本では、親の認知症リスクに備える手段として注目されてきました。しかし実際には「使いにくい」という声も多く、制度の利用率は必ずしも高くありませんでした。
現行制度が抱える3つの大きな問題点
1. 終身制による負担
現行の成年後見制度は、原則として本人が亡くなるまで続きます。たとえば「遺産分割協議のためだけに一時的に利用したい」と思っても、協議が終わったからといって途中でやめることはできません。
これが心理的なハードルとなり、「必要な場面でも利用をためらう」原因になっていました。
2. 過剰な権利制限
特に判断能力が極めて低いとされる「後見」類型では、成年後見人に包括的な代理権が与えられる一方で、本人の行為が大幅に制限されます。本人が何かを決めたいと思っても、「後見人が行うもの」とされ、自己決定権が必要以上に制約されるという批判がありました。
3. 費用の継続発生
司法書士や弁護士などの専門職が後見人に選任された場合、本人の財産から月額数万円の報酬が支払われ続けます。これが何年も、時には10年以上続くこともあり、家族にとっては経済的な不安要素となっていました。
2026年改正で何が変わる?新制度の3大ポイント
1. 終わりのある後見が可能に
新制度では、支援の具体的な課題(不動産売却、遺産分割協議など)に応じて、必要な期間だけ利用する、あるいは課題が解決したら終了するといった「終わりのある後見」が可能になります。
これにより、スポット的な利用が格段にやりやすくなり、「一生続く」というプレッシャーから解放されます。
2. オーダーメイド型支援への転換
現行の「後見・保佐・補助」という3つの複雑な区分を整理し、原則として「補助」をベースとした制度に一本化される方向です。
本人の状況に合わせて、どの行為に代理権や同意権を与えるかを個別に設定できる「オーダーメイド方式」が導入されます。支援者に権限を与える際、原則として本人の同意が必要となり、「何でもかんでも取り上げられる」のではなく、「必要なところだけ手伝ってもらう」という形に変わります。
3. 特定補助の新設
判断能力が著しく低い方については、例外的に「重要かつ具体的な11項目の財産行為(不動産の処分など)」に限定して取消権などを持たせる「特定補助」という仕組みが検討されています。
これにより、本人の保護と自由のバランスをより細かく調整できるようになります。
改正後も家族信託・任意後見の重要性は変わらない
新制度が始まっても、「家族信託」や「任意後見」の重要性は変わりません。むしろ、選択肢が増えることで「親が元気なうちに、どの方法が最適か?」を考える必要性が高まります。
家族信託とは
家族信託は、親が元気なうちに財産の管理・運用を家族に託す仕組みです。成年後見制度のような厳格な制限がなく、柔軟に財産管理ができる点が大きなメリットです。
任意後見とは
任意後見は、将来判断能力が低下した場合に備えて、あらかじめ信頼できる人を後見人として指定しておく制度です。自分の意思で後見人を選べる点が、法定後見との大きな違いです。
80代の親を持つ40代が今すぐやるべきこと
1. 親の財産状況を把握する
預貯金、不動産、保険、株式など、親の財産の全容を把握しましょう。エンディングノートを活用するのも有効です。
2. 家族で話し合う場を設ける
「まだ元気だから大丈夫」ではなく、「元気なうちに準備する」ことが大切です。兄弟姉妹がいる場合は、全員で共有しておくことでトラブルを防げます。
3. 専門家に相談する
成年後見、家族信託、任意後見、それぞれにメリット・デメリットがあります。親の状況や家族構成に応じて最適な方法を選ぶために、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
4. 遺言書の作成も検討する
成年後見制度だけでなく、遺言書の作成も並行して検討しましょう。遺言書があれば、相続時のトラブルを大幅に減らすことができます。
まとめ:選択肢が増える今こそ、準備のチャンス
2026年の成年後見制度改正は、「使いにくい」と言われてきた制度を「柔軟で使いやすい」ものに変える大きな転換点です。終身制からの脱却、オーダーメイド型支援、本人の意思尊重——これらはすべて、利用者とその家族の負担を減らすための改正です。
しかし、制度が変わっても「元気なうちに準備する」ことの重要性は変わりません。80代の親を持つ40代の皆さんにとって、今はまさにラストチャンスと言えるタイミングです。
家族で話し合い、専門家と一緒に最適な方法を考えることが、後々の安心につながります。認知症になってからでは選択肢が限られます。だからこそ、今、行動を起こしましょう。
▼元記事はこちら
https://news.yahoo.co.jp/articles/08b9d5f8972e6da16151a57a2bfb829487327da9
プロフィール:繁森一徳
(司法書士しげもり法務事務所代表司法書士)
岡山県出身。岡山大安寺高等学校卒業、関西学院大学法学部卒業。現在は、大阪市の天王寺・上本町を拠点に、相続・遺言・生前贈与・民事信託(家族信託)に特化した法的支援を展開。地域に根差した活動も行っており、天王寺区や東成区などの各区役所・区民センターなどで、無料相談会の開催実績多数。
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