

はじめに
「節税したいなら不動産を買っておけ」
これは長年、富裕層や経営者の間で常識とされてきた相続税対策です。
しかし、2026年以降、この常識が大きく変わろうとしています。
Yahoo!ニュースに掲載された記事では、相続直前に14億円のタワーマンションを購入し、相続税評価額を大幅に圧縮して「相続税0円」で申告した遺族が、国税庁によって否認され、多額の追徴課税を受けたという衝撃的な事例が報じられています。
相続遺言専門の司法書士として、日々多くのご家族の相続をサポートしている立場から、この問題を深掘りし、80代の親を持つ40代の皆さんが今すぐ考えるべきことをお伝えします。
なぜ不動産は「最強の節税ツール」と呼ばれてきたのか?
まず、不動産がなぜ節税に有利とされてきたのかを理解しましょう。
現金1億円を相続する場合、相続税の計算上も「1億円」として評価されます。
しかし、不動産は異なります。
土地は「路線価」で評価され、これは時価の約8割です。
建物は「固定資産税評価額」で評価され、これは建築費の約5〜6割程度です。
さらに、賃貸用の不動産であれば評価はさらに圧縮されます。
「小規模宅地等の特例」などの制度を駆使すれば、時価1億円の物件が相続税上、わずか2,000万円程度の評価になることもあります。
そして極めつけは「借入金」の活用です。
たとえば、10億円を借りて10億円の不動産を購入したとします。
借入金は10億円のマイナス財産として評価されますが、物件の評価額が3億円まで圧縮されれば、差し引きで「7億円分の資産圧縮」が可能になります。
これが「不動産は最強の節税ツール」と呼ばれてきた理由です。
国税庁の逆襲「総則6項」という名の後出しジャンケン
しかし、国税庁はこの状況を黙って見てはいませんでした。
「相続税法基本通達第1章第1節6(通称:総則6項)」という条項があります。
これは、たとえルール通りの計算であっても、その評価が「著しく不適当」とみなされれば、国税側が独自の評価(不動産鑑定評価など)で否認できるという、まさに"後出しジャンケン"とも言える強力な権限です。
令和4年の最高裁判決では、亡くなる直前に約14億円でタワーマンションを購入し、ルール通りに「相続税0円」で申告した遺族に対し、国税が総則6項を適用しました。
最高裁はこれを支持し、遺族には多額の追徴税が課されました。
つまり、「ルールを守っていれば安心」という時代は、すでに終わっているのです。
令和8年度税制改正で何が変わるのか?
2026年(令和8年)以降、不動産を利用した相続税節税はさらに厳しくなると予想されています。
特にターゲットとなっているのが以下の2つです。
1. 不動産小口化商品
少額から都心の一等地を所有できる不動産小口化商品は、富裕層の間で人気の節税商品でした。
しかし、これも国税庁の厳しい監視対象となっています。
2. 相続直前の「駆け込み購入」
亡くなる直前に不動産を購入するような、明らかに節税目的と判断されるケースは、今後ますます否認されるリスクが高まります。
80代の親を持つ40代が今すぐやるべきこと
では、80代の親を持つ40代の皆さんは、どうすればいいのでしょうか?
司法書士として、以下のアクションをおすすめします。
1. 親の財産を把握する
まずは、親がどのような財産を持っているのかを把握しましょう。
不動産、預貯金、株式、保険、借入金など、全体像を知ることが第一歩です。
親が元気なうちに、できるだけオープンに話し合う機会を持ちましょう。
2. 遺言書の作成を勧める
相続で揉める最大の原因は「遺言書がないこと」です。
遺言書があれば、親の意思が明確になり、相続人同士のトラブルを防ぐことができます。
特に、不動産が複数ある場合や、相続人が多い場合は必須です。
公正証書遺言の作成を強くおすすめします。
3. 過度な節税対策は避ける
今回のニュースからわかるように、行き過ぎた節税対策は大きなリスクを伴います。
「相続税をゼロにしたい」という気持ちはわかりますが、国税に否認され、追徴課税を受けるリスクを考えると、適切な範囲での対策にとどめるべきです。
4. 専門家に相談する
相続は複雑です。
税理士、司法書士、弁護士など、それぞれの専門家が連携してサポートすることが重要です。
特に不動産の評価や相続税の申告は、税理士の専門分野です。
遺言書の作成や相続登記は司法書士の専門分野です。
トラブルが予想される場合は、弁護士の関与も検討しましょう。
5. 家族でしっかり話し合う
相続は「お金の問題」だけではありません。
親の想いを形にし、家族が納得できる形で財産を次世代に引き継ぐことが大切です。
親が元気なうちに、家族全員で話し合う機会を持ちましょう。
相続で本当に大切なこと
司法書士として多くの相続をサポートしてきた経験から言えるのは、
「相続で本当に大切なのは、節税ではなく、家族が揉めないこと」です。
どれだけ相続税を節税できても、家族が揉めてしまえば、親は喜びません。
逆に、多少の相続税を払っても、家族が円満に財産を引き継げれば、それが一番の親孝行です。
不動産節税が否認されるリスクを避けるために
もし、すでに不動産を利用した相続税対策を検討している、あるいは実行している場合は、以下の点に注意してください。
・相続直前の駆け込み購入は避ける
・不動産小口化商品の過度な利用は控える
・借入金を使った極端な評価圧縮は危険
・必ず税理士に相談し、リスクを理解する
特に、「相続税0円」を目指すような極端な対策は、今後ますます否認されるリスクが高まります。
まとめ
「相続税0円は許さない」という国税の姿勢は、今後ますます強まることが予想されます。
80代の親を持つ40代の皆さんは、今がまさに相続について真剣に考えるタイミングです。
節税だけに目を向けるのではなく、
・親の財産を把握する
・遺言書を作成する
・家族で話し合う
・専門家に相談する
これらのステップを踏んで、家族が揉めない、後悔しない相続を実現しましょう。
もし、相続について「何から始めればいいかわからない」という方がいらっしゃいましたら、お気軽に相談してください。
相続遺言専門の司法書士として、あなたとご家族の想いを形にするお手伝いをさせていただきます。
参考記事URL: https://news.yahoo.co.jp/articles/189041917a0c63d0f4825964951525a458149115