

80代の親を持つ40代のあなたへ。実家の相続、真剣に考えたことはありますか?
「まだ親は元気だし、相続なんて先の話」と思っていると、いざ相続が発生したときに予想外の事態に直面してしまうかもしれません。実は今、相続した実家を放置することで、固定資産税が6倍に跳ね上がったり、売却しても赤字になる「負動産」化が社会問題となっています。
本記事では、相続・遺言専門の司法書士として数多くのご家族を支援してきた視点から、実家の空き家問題とその対策について、わかりやすく解説します。
空き家を放置すると固定資産税が6倍になる理由
Yahoo!ニュースで報じられた事例では、親が亡くなり実家を相続したものの、誰も住む予定がなく「とりあえずそのまま」にしていたところ、ある日突然、固定資産税が年2万円から12万円へと6倍に跳ね上がる通知が届いたそうです。
なぜこのようなことが起こるのでしょうか。その背景には「空き家対策特別措置法」という法律があります。
通常、住宅が建っている土地には「住宅用地の特例」という減税措置が適用されており、固定資産税が本来の6分の1に軽減されています。つまり、本来12万円の固定資産税が2万円で済んでいたのは、この特例のおかげなのです。
しかし、空き家を適切に管理せずに放置し、倒壊の危険や衛生上の問題があると判断されると、自治体から「特定空家等」に指定される可能性があります。そして、指定されるとこの特例が取り消されてしまうのです。
さらに注意が必要なのは、2023年12月の法改正により、特定空家になる手前の「管理不全空家等」に指定された段階でも、特例が解除されることになった点です。つまり、「危険」と判断される前の段階でも、適切に管理されていないと判断されれば税負担が増える可能性があるのです。
相続登記の義務化でさらなる負担も
2024年4月からは、相続登記が義務化されました。相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記をしないと、10万円以下の過料が科される可能性があります。
これまで「登記は任意だから後回しでいい」と考えていた方も多いと思いますが、今後は期限内に手続きをしなければペナルティが発生します。遠方に住んでいる、兄弟と連絡が取りにくいなどの理由で放置していると、さらに負担が増えてしまうのです。
売却しても赤字?「負動産」の実態
「固定資産税が上がるなら、すぐに売ってしまえばいい」と考える方もいるでしょう。しかし、地方や郊外の古い家は思うような価格で売れないことが多いのが現実です。
記事によると、やっと300万円で買い手がついたとしても、築40年以上の古い家は建物としての価値がほぼゼロで、買い手から「更地にしてから引き渡してほしい」と条件をつけられるのが一般的だそうです。
木造住宅の解体費用の相場は、1坪あたり4万円から5万円程度。一般的な40坪の家であれば、解体費用だけで約200万円かかります。
売却額300万円から解体費用200万円を引き、さらに不動産会社への仲介手数料(売却額の3%+6万円+消費税)や測量費用、税金などを差し引くと、手元に残るお金はわずか数十万円、場合によってはマイナスになることもあります。
さらに、敷地内に大量の不用品が残っていたり、アスベスト(石綿)の除去が必要だったりすれば、解体費用はさらに跳ね上がります。こうして実家は、資産どころか負債となる「負動産」に変わってしまうのです。
なぜ一般家庭ほど相続問題が深刻なのか
「うちは大した財産がないから大丈夫」と思っている方も多いかもしれません。しかし実は、相続トラブルの多くは一般家庭で起きています。
最高裁判所の司法統計によると、遺産分割事件のうち約78%は遺産額5000万円以下の家庭で発生しています。むしろ、財産が少ない家庭の方が「分けにくい」「現金が少なく不動産ばかり」といった理由でトラブルになりやすいのです。
特に実家という不動産は、兄弟姉妹の間で「誰が相続するか」「売却するかしないか」で意見が対立しやすく、感情的な対立に発展することも少なくありません。
実家の相続で後悔しないために今できること
では、実家の相続で後悔しないために、40代の今、何をしておくべきでしょうか。以下に具体的な対策をご紹介します。
親が元気なうちに家族で話し合う
最も大切なのは、親が元気なうちに「実家をどうするか」を家族で話し合っておくことです。親の希望を聞き、兄弟姉妹の意向も共有しておくことで、相続後のトラブルを防ぐことができます。
話題を切り出しにくいと感じる方も多いと思いますが、「将来のために一緒に考えたい」という姿勢で臨めば、親御さんも前向きに受け止めてくれるはずです。
実家の資産価値を把握する
実家が今どのくらいの価値があるのか、売却するとしたらいくらになるのか、固定資産税はいくらかかっているのかを把握しておきましょう。不動産会社に査定を依頼すれば、無料で概算を教えてもらえます。
また、固定資産税の納税通知書を見せてもらい、現在の税額を確認しておくことも重要です。
生前にできる選択肢を検討する
実家をどうするかは、相続後に考えるのではなく、生前に方針を決めておくことが理想です。以下のような選択肢があります。
・生前に売却する:親が元気なうちに実家を売却し、現金化しておく方法。相続後の手続きが簡単になります。
・賃貸に出す:誰も住まないなら、賃貸に出して収益化する方法もあります。
・リフォームして誰かが住む:子どもや孫が住む予定があるなら、生前にリフォームしておくことも一案です。
・家族信託を活用する:親が認知症になっても柔軟に財産管理ができる「家族信託」という制度もあります。
・遺言書を作成する:誰が実家を相続するかを明確にしておくことで、相続後のトラブルを防げます。
専門家に相談する
相続・不動産・税金の問題は複雑で、一般の方が自分だけで判断するのは難しいものです。司法書士、税理士、不動産コンサルタントなどの専門家に早めに相談することをおすすめします。
相談することで、家族の状況に合った最適な解決策が見つかります。また、専門家が間に入ることで、家族間の感情的な対立を避け、冷静に話し合いを進めることができます。
空き家になってしまった場合の対処法
すでに実家が空き家になってしまった場合でも、適切に対処すれば「管理不全空家」の指定を避けることができます。
定期的に清掃・換気をする
月に1回程度は実家を訪れ、清掃や換気を行いましょう。庭の草木も適切に管理し、近隣に迷惑をかけないようにすることが大切です。
空き家管理サービスを利用する
遠方に住んでいて定期的に訪れるのが難しい場合は、空き家管理サービスを利用する方法もあります。月額1万円程度で、定期的な見回りや清掃、郵便物の整理などを代行してくれます。
早期に売却または活用を検討する
放置期間が長くなるほど、建物は劣化し、売却も困難になります。相続後できるだけ早く、売却するか活用するかを決断することが重要です。
まとめ:40代の今こそ、家族の未来を考える時期
実家の相続は、誰にとっても「いつか」必ず向き合う問題です。しかし、多くの方が「まだ先の話」と先延ばしにしてしまい、いざ相続が発生してから慌てて後悔するケースが後を絶ちません。
固定資産税が6倍になる、売却しても赤字になる、兄弟間でトラブルになる——こうした事態は、事前の準備で防ぐことができます。
80代の親を持つ40代の皆さんは、まさに「親の介護」と「自分の老後」の両方を考えなければならない世代です。仕事や子育てで忙しい時期かもしれませんが、だからこそ今、家族で話し合い、計画的に準備を進めることが大切です。
相続は「争族」にしてはいけません。家族が笑顔でいられる未来のために、専門家の力も借りながら、一歩ずつ前に進んでいきましょう。
何かご不安なことがあれば、お気軽にご相談ください。あなたとご家族の未来を、一緒に考えさせていただきます。
https://news.yahoo.co.jp/articles/983fd6e9019e9b2b20e4abf1a98125ab04db408f