※脂身豚バラ濃い目の煮卵
もし赤ちゃんが相続人だったら?
~知らないとトラブル多発!相続とお金のディープな話~
【はじめに】
相続の話をすると、「それってお金持ちの話でしょ?」と感じられる方も少なくありません。けれど実際には、家庭裁判所に持ち込まれる遺産争いの8割近くが「遺産5,000万円以下の普通の家庭」で発生しているというデータがあります。特に最近は、核家族化や離婚・再婚の増加により、相続人の中に「未成年者」がいるケースが目立つようになってきました。
この記事では、「赤ちゃんや未成年者が相続人になったとき、相続手続きはどうなるのか?」という視点から、実務の現場でよくある誤解や注意点、スムーズに進めるための方法について、司法書士としての立場から詳しく解説してまいります。
【1. 相続の基本と未成年者が関わるときの落とし穴】
相続が発生すると、遺産をどう分けるかについて、次の2通りの方法があります。
一つは、亡くなられた方が遺言書を残していた場合。その内容に従って分割します。
もう一つは、遺言書がない場合。この場合は、法定相続人全員で「遺産分割協議」を行って、分け方を話し合います。
ここで問題となるのが、「法定相続人の中に未成年者がいる場合」です。
たとえば、父親が亡くなって、妻と赤ちゃんが相続人になったとしましょう。相続人である赤ちゃんには、当然ながら遺産を分ける話し合いに参加する能力はありません。
そのため、原則として未成年者の親権者(この場合は母親)が、代理人として遺産分割協議に参加することになります。
【2. 「利益相反」と「特別代理人」の重要性】
ここで「利益相反」という法的な考え方が問題になります。
たとえば、相続人が母親と赤ちゃんの2人だとすると、母親が自分の利益を優先して多く相続すれば、その分赤ちゃんの取り分が減るという関係性が生まれます。これが「利益相反関係」です。
このような場合、母親は親権者であっても代理人になることができません。
つまり、未成年者と親権者がともに相続人になるケースでは、「特別代理人」を立てなければならないのです。
この「特別代理人」とは、未成年者の利益を守るために家庭裁判所が選任する第三者のこと。特別代理人は、親権者とは異なる立場で、未成年者の代わりに遺産分割協議に参加します。
実際の手続きでは、遺産分割協議書に「母親」と「特別代理人」の両者が署名・実印を押し、それぞれの印鑑証明書を添付して手続きを進めていく形になります。
【3. よくある誤解:「17歳ですが、理解できます」問題】
未成年者といっても、一律に判断能力がないわけではありません。特に、高校生など年齢が上がってくると、「私は17歳ですが、内容は理解できます。話し合いに参加したいです」という声も現場ではよく耳にします。
しかし、法律上は「成年」に達していなければ、たとえ理解能力があっても正式な手続きには参加できません。現在、成年年齢は18歳に引き下げられていますが、17歳以下の方が自分で遺産分割協議書に署名・押印しても、法務局や金融機関はその書類を受理してくれません。
このため、17歳であっても「特別代理人」の選任が必要になります。
ただし、もし誕生日が近いようであれば、18歳になってから遺産分割協議を始めるという選択肢もあります。この場合、「相続発生時点での年齢」ではなく「協議を行う時点での年齢」が基準となる点に注意が必要です。
【4. 特別代理人の選任手続きとスケジュール管理】
特別代理人を選ぶには、未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てを行います。手続きに必要な主な書類は以下の通りです:
- 特別代理人選任申立書
- 未成年者と親権者の戸籍謄本
- 候補者の住民票など
- 遺産分割協議書の案
この「協議書の案」というのがポイントです。つまり、誰を特別代理人にするか、そして遺産をどのように分けるか、ある程度話し合いがまとまっている必要があります。
裁判所が勝手に代理人を決めてくれるわけではなく、申立人が候補者を立てて、その適否を家庭裁判所が審査する流れです。
申し立てから実際に特別代理人が選任されるまでには、おおよそ1ヵ月程度を見込んでおくと良いでしょう。
ここで大切なのが、相続税の申告期限です。相続が発生してから10ヵ月以内に申告と納税を終えなければならないため、手続きにかかる時間も逆算してスケジュール管理をする必要があります。
【5. 親権者が代理人になれる場合】
一方で、すべてのケースで特別代理人が必要になるわけではありません。たとえば、未成年者の親権者が相続人でない場合には、利益相反は発生しないため、親権者がそのまま代理人として協議に参加することが可能です。
具体的には、再婚家庭などで発生するケースが該当します。
たとえば、亡くなった父親が再婚していて、前妻との間に子どもがいた場合。その子ども(未成年)が相続人となり、親権者は前妻、後妻は相続人となります。この場合、前妻(親権者)は相続人ではないため、利益相反は生じません。したがって、前妻が未成年者の代理人として協議に参加することができます。
このように、家庭の構成や相続人の関係性によって、必要な手続きが大きく変わってきます。
【6. 実務家としてのアドバイス:早めの相談が鍵】
司法書士として日々相続のご相談を受ける中で強く感じるのは、「もっと早く相談してくれていれば…」というケースの多さです。
相続は突然やってきます。特に未成年者が関係する場合は、通常よりも手間がかかるため、スケジュールに余裕を持った行動が求められます。また、親族間での意思疎通がうまくいっていない場合や、複雑な家庭事情がある場合には、弁護士や税理士と連携して進めることも必要になります。
「家族の未来を守るために、いま準備しておくこと」――それが、争いを未然に防ぐ最も有効な手段です。
【まとめ】
・相続トラブルの多くは「普通の家庭」で起きている
・未成年者が相続人になると「特別代理人」の選任が必要なケースがある
・17歳でも自分で協議に参加することはできない
・親権者と未成年者が同時に相続人でない場合は代理人としての関与が可能
・特別代理人の選任には時間と準備が必要。早めの行動が重要
【最後に】
司法書士しげもり法務事務所では、相続に関するご相談を初回無料で承っております。
特に、未成年者が相続に関わるご家庭では、法的な視点からの助言と具体的な手続き支援がトラブル回避に直結します。
「これってうちにも関係ある話かも…」と思われた方は、どうぞお気軽にご相談ください。
あなたとご家族の大切な未来を守るお手伝いができれば幸いです。
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司法書士しげもり法務事務所
繁森 一徳(しげもり かずのり)
大阪市にて相続・高齢者支援を専門に活動中
高齢の親御さんをもつご家族、相続で悩まれている方へ
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