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【はじめに】
遺言書というと、多くの方が「財産を誰に残すか」という形式的なイメージを持たれているかもしれません。しかし、最近の終活においては、「自分の人生の集大成として、どんな想いを誰に伝えたいか」という精神的な側面が、ますます注目されるようになっています。
そんな流れを象徴するような出来事が、世界的ゲームクリエイター・小島秀夫さんの発言でした。彼が「自分の死後のために、アイデアを詰め込んだUSBメモリを秘書に託した」というニュースは、単なる“終活の話題”を超え、多くの人の心に響くものとなっています。
本記事では、小島秀夫さんの“USB遺言”から見えてくる新しい終活のあり方、そして「想いを残す遺言書」の重要性について、司法書士としての視点から丁寧に解説していきたいと思います。
【ニュースの背景】
2024年、Edge magazineのインタビューで小島秀夫さんは、自身がパンデミック中に大きな病気を患い、目の手術も受けたこと、また、周囲の人々が次々と亡くなる現実を目の当たりにして、死に対する認識が大きく変わったと語りました。
それまで、「生きている限り、ずっと創作活動を続けられる」と信じていた彼が、「自分の死後、コジマプロダクションはどうなるのか?」と深く考えるようになり、その結果として「自分のすべてのアイデアを詰め込んだUSBメモリを秘書に託した」という行動に至ったのです。
このUSBメモリには、まだ形になっていないゲームや映画のアイデアが多数詰まっており、小島さんはこれを「遺言のようなもの」と表現しました。
【この行動に込められた本質とは?】
この小島さんの行動は、法律上の正式な「遺言書」としての効力は持ちません。USBメモリに記録された内容は、法的な遺言としての要件(全文自筆・日付・署名など)を満たしていないためです。
それでも、私たちがこの出来事から学べるのは、「人は死を意識したとき、何を残したいと願うのか?」というとても本質的な問いです。
小島さんが遺したかったのは、財産や相続の配分ではなく、自分が長年にわたって育ててきた“創造の種”。言い換えれば、「想い」や「ビジョン」です。
これは、現代の終活が目指すべき方向性とも重なります。物質的なものだけでなく、精神的な価値や想いをどう伝えていくか――そこに本当の意味での「遺言の意義」があるのではないでしょうか。
【司法書士の立場から見た遺言のあり方】
司法書士として、日々さまざまなご相談に触れる中で、「遺言書って、本当に必要ですか?」と尋ねられることは少なくありません。その背景には、遺言=財産の分配、といった限定的なイメージがあるように感じます。
しかし、遺言書には法的な効力を持たせる“形式的側面”と、故人の気持ちや考えを伝える“精神的側面”の両方があるのです。
たとえば「付言事項」と呼ばれる欄に、自分の想いを書き添えることで、遺されたご家族や関係者が心から納得し、感謝とともに遺志を受け取ることができます。
あるご相談者は、法定相続分に従ったシンプルな遺言書を希望されていましたが、私は「なぜそのように分けたいのか、気持ちを文章で残してみませんか」と提案しました。その結果、長男に「母の面倒を最期まで看取ってくれてありがとう」といった感謝の言葉が記され、残された家族の心に深く届いたということがありました。
これはまさに、小島秀夫さんがUSBに託した“想い”と通じる部分です。
【これからの遺言書は「人生のメッセージブック」】
今後、遺言書のあり方はますます多様化していくと考えられます。
● 事業をされている方は、自身の理念やお客様への感謝を
● お子様がいらっしゃる方は、成長を見守った親としての思い出を
● ご夫婦の方は、人生を共に歩んだ相手への手紙のような言葉を
残していくことができるのです。
実際、私の事務所でも、「エンディングノート」と「遺言書」を組み合わせて、心のこもった終活サポートを行うご依頼が増えています。
テクノロジーの進化により、動画メッセージを遺したり、音声記録を使って自分の声で想いを伝えるといった試みも登場しています。小島さんのように「USBにアイデアを残す」方法は、これからの時代の新しい終活の一例とも言えるでしょう。
【“想いを遺す”ことが、未来の安心につながる】
終活というと、なんだか寂しくてネガティブな印象を持たれるかもしれませんが、私は「未来への贈り物」だと思っています。
自分の死後、大切な人が困らないように、そして悲しみの中に少しでも温かさや安心が届けられるように。そのために「想いを遺す」という行為が、どれほど価値あるものかを、司法書士として何度も見てきました。
だからこそ、まだ元気なうちから準備を始めてほしいのです。
特別なことを書かなくても構いません。「ありがとう」とか、「これからも頑張って」とか、それだけでも、十分に力になる遺言になります。
【まとめ】
小島秀夫さんの“USB遺言”は、従来の遺言書の概念を超えて、私たちに「遺すとはどういうことか?」という問いを投げかけています。
遺言書は、単なる法的文書ではありません。
それは、あなたの「想い」と「願い」を未来につなぐ、大切なメッセージブックです。
今をどう生き、何を遺したいのか。
その答えを少しずつでも言葉にしていくことが、きっとあなた自身にも、そして大切な人にも、心の安心をもたらしてくれるはずです。
「遺言」という言葉に、少しでも関心を持たれた方は、ぜひお気軽にご相談ください。
司法書士として、そして“想いの通訳者”として、あなたの終活を丁寧にお手伝いさせていただきます。
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司法書士しげもり法務事務所
繁森 一徳(しげもり かずのり)
大阪市にて相続・高齢者支援を専門に活動中
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