※ハムハムちゃーしゅーに肉海老ワンタン
遺言だけじゃ足りない!──50代から始める終活で本当に大切な「知識・対話・死生観」
【はじめに】
「終活」という言葉が一般化してから、もう10年以上が経ちました。
近年では「エンディングノート」や「遺言書の作成」などが広まり、50代以上の方を中心に、自身の老後や最期について考える方が増えています。
しかし、司法書士として相続や後見の現場に日々向き合っていると、「終活をしていたはずなのに、なぜか家族間で揉めてしまった」というケースにも、少なからず出会います。
この記事では、終活スナック「めめんともり」のママである村田ますみさんの体験をもとに、終活において見落とされがちな3つの視点——「知識」「対話」「死生観」——について、司法書士の視点からじっくり解説いたします。
50代の今だからこそできる、未来の自分と家族のための終活。
「遺言だけでは足りない」と感じた方に、ぜひ最後までお読みいただければと思います。
【第1章:遺言があっても安心できない?──“知識”とその限界】
「うちは遺言書があるから大丈夫」
そう安心していたご家族が、いざ相続の場面で深刻なトラブルに巻き込まれてしまった――。
これは、私がこれまで実務で何度も見てきた現実です。
村田さんの体験談にもあったように、たとえ遺言書が残されていても、それが「家族に伝わっていなかった」「内容が偏っていた」「法的に無効だった」といった理由から、かえって争いの火種となることが少なくありません。
特に注意が必要なのは、「孫に全財産を遺贈する」など、一般的な相続の慣習から外れた遺言の場合。
一見すると“感謝の気持ち”を示したものであっても、他の法定相続人からすると「なぜ自分には何もないのか?」という疑念を抱かせてしまいます。
また、遺言書の作成にあたっては、民法や税法の基礎知識、そして何より“遺された人の気持ち”を想像する視点が欠かせません。
司法書士としては、単に書類を作成するだけでなく、「この遺言で誰かが傷つくことはないか?」「誤解やトラブルの種はないか?」という“第三者の目”で内容を確認し、必要があればご本人に提案を行うことも重要な役割だと考えています。
知識は、終活の土台となるもの。
しかしそれだけでは、家族の未来を守りきることはできません。
【第2章:「迷惑をかけたくない」の落とし穴──“対話”の大切さ】
「子どもに迷惑をかけたくないから、話さずに準備だけしておきたい」
そんな声を、相談の中でよく耳にします。
お気持ちはよくわかります。
けれど、実はこの「話さない終活」こそが、家族にとっての“最大の迷惑”になる可能性があるのです。
親が何も言わずに亡くなってしまい、どのように見送ればいいのか、何を望んでいたのかが全く分からない。
遺品の整理、葬儀の形式、遺産分割の方針……すべてを遺された側が決めなければならない状況は、想像以上に負担が大きいものです。
対話とは、準備と同じくらい、あるいはそれ以上に大切な終活の柱です。
・普段から自然と老後や最期のことを話せる関係性
・定期的に会話を重ねることで、価値観や希望をすり合わせておくこと
・形式ばらずに、LINEや電話でも思いを伝えられること
このような日常の積み重ねが、いざという時の判断基準となり、「故人の意思を尊重できた」と感じられる見送りにつながるのです。
私自身、遺言書の作成や成年後見制度の活用をお手伝いする際には、「ぜひ一度ご家族と話し合ってみてください」とお伝えしています。
対話の時間こそが、家族の絆を深め、安心を共有する大きな力になるのです。
【第3章:「任せる」のではなく「伝える」──“死生観”を育てる】
終活を考えるうえで、もっとも根本的で、そしてもっとも個人的なテーマが「死生観」です。
「自分の最期をどう迎えたいか」
これは、誰かに決めてもらうものではなく、自分自身で見つめ、言葉にし、そして伝えていくべきものです。
たとえば、
・延命治療はどこまで希望するのか?
・病気になったとき、どこで療養したいのか?
・葬儀はどのような形式で、誰に見送ってほしいのか?
・お墓は?散骨は?供養はどうしたいのか?
これらを「家族が判断してくれるだろう」と任せてしまうと、残された方々が苦しむことになります。
「本当はどうしたかったのだろう…?」と迷い、罪悪感や後悔を背負うことにもなりかねません。
また、自分の死生観を深めていくことは、人生の残り時間をどのように生きるかを考えることにもつながります。
「やりたいことを後回しにしない」
「毎日を大切に生きる」
「誰かに感謝を伝える」
そのような生き方の積み重ねが、「悔いのない最期」への道しるべになるのです。
村田さんが行ったように、散骨や食事会など、ご自身の希望を形にしながら、ご家族との心の共有を図る取り組みは、まさに理想的なグリーフケアの形だと思います。
【第4章:司法書士が見てきた“後悔しない終活”とは】
司法書士として、これまで数百件の遺言、相続、後見に関わってきました。
その中で強く感じるのは、「書類」よりも「気持ち」の準備こそが、後悔を減らすということです。
・遺言書はあっても、気持ちが伝わらず家族が混乱したケース
・制度の準備は万全でも、親の本音を知らずに悩んだ子どもたち
・話し合いが重ねられた家族は、困難な局面でも心が一つだったこと
“終活=書類の準備”と捉えがちですが、本当に大切なのは「人生のあり方を伝えること」だと思います。
そのうえで、専門家としては、正確な制度の知識、適切な手続きのアドバイス、そして家族との調整のサポートを提供していくことが、私たち司法書士の使命だと考えています。
【まとめ:終活は、未来への贈り物】
50代の私たちは、ちょうど人生の折り返し地点。
親の介護や看取り、自分自身の健康や仕事、子どもの独立など、さまざまな人生の転機が重なる時期です。
そんな中で、終活に取り組むことは、「自分の人生をどう締めくくるか」という問いに向き合うことでもあります。
・遺言などの**知識**を持ち
・家族との**対話**を重ね
・自分なりの**死生観**を育てる
この3つがそろえば、終活は決して怖いものではありません。
むしろ、それは家族への“未来の贈り物”になるはずです。
そして何より、「自分がどうありたいか」を軸に、これからの人生を丁寧に生きていくことで、周囲の人たちにも安心と温かさを届けられるのではないでしょうか。
司法書士しげもり法務事務所では、相続や遺言の作成支援はもちろん、ご家族間の調整や高齢者の身元支援など、終活に関するあらゆるご相談を受け付けています。
一人ひとりの想いに寄り添い、「自分らしい終活」のお手伝いができれば幸いです。
ご不安や疑問があれば、どうぞお気軽にご相談ください。
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司法書士しげもり法務事務所
繁森 一徳(しげもり かずのり)
大阪市にて相続・高齢者支援を専門に活動中
高齢の親御さんをもつご家族、相続で悩まれている方へ
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