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国籍を越えた相続の落とし穴――帰化した父の死と「知られざる異母兄弟」。いま高齢の親をもつご家族に伝えたい、戸籍と相続のリアル
【はじめに】
「うちの親はもうすぐ80歳。そろそろ終活を考えないとと思っているけど、何から始めていいのかわからない」
そんな声を最近よく耳にします。特に、大阪のように多様なルーツを持つご家庭では、日本の相続制度だけでは想定できないケースも増えてきました。
今回取り上げるのは、「帰化した韓国人の父親が亡くなり、相続手続きを進める中で、知られざる異母兄弟の存在が明らかになった」という実話をもとにしたニュースです。
一見ドラマのような展開に思えるかもしれませんが、司法書士として実務に関わっていると、実はこうした国際的な相続のご相談が年々増加していることを実感します。とくに高齢者支援に携わる立場として、こうした事例にどう向き合い、何を備えるべきか――丁寧にお伝えしていきたいと思います。
【事例の概要】
江戸川区で会社を営む40代の男性・山本大輔さん(仮名)は、最近父親を亡くされました。父・太一さん(仮名)は生前、会社の経営をともに担っていた人物で、自社ビルや株式など多くの財産を残していました。大輔さんは、自身が子どものころに一家で韓国から日本に帰化していたため、「相続人は兄弟3人だけ」と考えていました。
ところが、いざ手続きを始めてみると、思わぬ事態が次々と起こります。
日本の相続手続きでは、被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍をすべて収集する必要があります。しかし、太一さんは帰化するまで外国籍だったため、日本での戸籍が途中からしか存在していません。
そのため、大輔さんは韓国側の書類も取り寄せることになりました。
そしてその中に、家族の誰も知らなかった「もうひとりの子ども」が記載されていたのです。
【戸籍制度の違いが引き起こす問題】
このような事態は、日韓両国の戸籍制度の違いと、それぞれの制度変更の歴史が複雑に絡み合って起こります。
韓国では、2008年に「家族関係登録簿」という新しい制度が施行され、それ以前の戸籍制度は廃止されました。太一さんが帰化したのはそれ以前だったため、韓国の新制度には記録されていないと思われていましたが、実際には旧制度のデータが韓国側に残っており、そこに別の子どもの記録が残っていたのです。
日本の戸籍には反映されない情報でも、韓国の制度上は「法定相続人」として認められる場合があります。今回のように、異母兄弟の存在が後から判明することで、相続手続きは大幅に長引くことになります。
【帰化した人の相続で起こりやすい課題】
この事例を通じて浮かび上がるのは、以下のような課題です:
1. **帰化前の記録が相続に影響する**
帰化した人の戸籍は帰化時からしか存在しないため、生まれてから帰化するまでの記録は外国から取り寄せる必要があります。
2. **日本では知られていない家族構成が存在する可能性**
過去に認知した子や、外国での婚姻・出生記録が日本では一切共有されていないケースも多く、残された家族はそれを知る由もありません。
3. **手続きに膨大な時間と労力がかかる**
外国の文書の収集には専門的な知識と多くの時間がかかり、放置してしまうと財産が「凍結」されてしまうおそれもあります。
【「終活」としての備えの大切さ】
こうした相続トラブルを防ぐには、親が元気なうちに準備を始めることが重要です。特に、帰化歴がある方や国際結婚をしている方は、次のような準備をおすすめします。
■1. 外国の記録を事前に取得・整理する
韓国に限らず、台湾・中国・フィリピンなど、外国籍から帰化された方は、帰化前の戸籍や出生証明、家族関係証明書などを早めに取り寄せ、ファイルにまとめておくと良いでしょう。これがあるだけで、相続人が手続きを進めやすくなります。
■2. 公正証書遺言を作成する
遺言書を残すことは、相続人間のトラブルを防ぐ最大の手段です。特に公正証書遺言は、形式不備による無効の心配がなく、公証人が保管してくれるため安心です。
■3. 家族間で「過去」を共有する場を設ける
「過去に認知した子がいる」「以前に婚姻歴があった」といった情報は、なかなか話しにくいことですが、信頼できる家族にだけでも伝えておくことが大切です。亡くなった後では取り返しがつかないこともあります。
■4. 専門家に相談する
国際相続の知識は、一般の方にはなじみが薄い分野です。司法書士や行政書士の中でも、国際相続を扱っている事務所に一度相談することで、必要な準備や今後の流れが明確になります。
【実務家としての想い】
私は大阪市で司法書士事務所を構え、高齢者支援や相続手続きを専門に業務を行っています。今回のような「国籍の壁」による相続トラブルは、都市部だけでなく、地方にも広がってきていると感じます。
とくに最近は、韓国ドラマやYouTubeの影響で、国際結婚が増えているという報道もあります。国際的な家族関係は、文化的にも価値あることですが、それに見合った制度理解と法的準備が追いついていないのが現状です。
「備えあれば憂いなし」という言葉がありますが、まさに相続はその最たるものです。家族に迷惑をかけたくない、思いをきちんと伝えたい――そう考える方こそ、早めの準備を始めていただきたいと思います。
【まとめ】
今回のニュースは、戸籍制度の違い、家族関係の透明性の難しさ、そして「相続は単なる財産の分け合いではない」という現実を改めて教えてくれます。
高齢のご両親を持つ方々にとって、相続の話題は気が重いかもしれません。しかし、それは“死”を前提とした話ではなく、“安心して生きるため”の準備でもあるのです。
司法書士として、またひとりの父親として、「伝えておけばよかった」「準備しておけばよかった」と後悔する人を減らしたい――その想いを胸に、今後も地域での法務支援に取り組んでまいります。
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司法書士しげもり法務事務所
代表 繁森 一徳(大阪市)
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