※醤油豚骨スープにトロトロたまごがゆらり
数億円の遺産が赤の他人に?「まさかの遺言」から見える、高齢者の終活にひそむ危機と家族の備え方
【はじめに】
「叔母が亡くなって、数億円の遺産が知らない団体に渡った」──。
そんな、まるで小説のような出来事が実際に起きました。
これは2024年5月に報道された、東京都在住の男性が体験した現実のエピソードです。
疎遠だった70代独身の叔母が遺した遺言書には、家族ではなく“ある宗教系団体”に全財産を遺贈する旨が記されていました。
遺産の規模はなんと数億円。
本人たちは遺言書の存在さえ知らず、家庭裁判所からの通知で初めて遺言の事実を知ったといいます。
この記事では、司法書士としての視点から、
この事例の何が問題なのか、
どんなリスクが私たちにも起こりうるのか、
そしてどのように備えるべきか、
を丁寧に解説していきます。
【第1章】“遺言書”が家族の絆を引き裂くとき
一般的に「遺言」は、亡くなった方の最終意思を尊重する重要な文書です。
しかしその内容が、家族の常識とかけ離れていたとき、
「本当に本人の意思なのか?」「誰かに誘導されたのでは?」という疑念が生じ、家族間に大きな波紋を呼びます。
今回の報道では、
- 家族は叔母との関係が希薄でありながらも、最後の対応は誠実に行っていた
- 葬儀や相続の初動を進めていた中で突如「検認」の通知を受けた
- 遺言書には、事業所も不動産も含むすべての財産を“赤の他人の団体”に譲る旨が書かれていた
という点で、非常に現実離れした衝撃を受けたことでしょう。
司法書士の立場から見れば、こうした“まさかの遺言”には以下のような法的観点が関係してきます。
■ 遺言能力の有無
→ 書いた当時、本人にしっかりとした判断力(意思能力)があったかどうか
■ 遺言の方式
→ 自筆証書遺言、公正証書遺言など、法律で定められた方式が守られているか
■ 不当な影響・誘導がなかったか
→ 特定の第三者が意図的に関与し、本人の自由意思を妨げていなかったか
これらの点が争点となれば、「遺言無効確認訴訟」などの法的手続きが必要になることもあります。
【第2章】高齢者が“孤立”する現代社会の怖さ
私が日々の相談で感じているのは、
「高齢者の孤独と、情報格差の深刻さ」です。
特に一人暮らしの高齢者が多くなっている今、
- 相談できる家族がいない
- ネット情報や訪問者の言葉を鵜呑みにしてしまう
- 何かにすがりたくなってしまう
という心理状態に置かれやすいのが現実です。
こうした中で宗教団体やネットでの“終活サポート”を名乗る業者が近づき、
・「あなたの財産を社会のために活かしませんか」
・「家族に迷惑をかけたくないでしょう?」
などの甘い言葉で心をつかみ、遺言書作成へ誘導する事例が実際に起こっています。
実際、私の事務所でも過去に「生前の意思と家族への配慮の不一致」に悩んだ相続人の方からの相談が多数寄せられました。
孤立した高齢者ほど、外部からの影響を受けやすい。
これは単なる想像ではなく、現場で日々感じている“確かな危機”です。
【第3章】“家族との対話”が、なによりの備えになる
この事例のようなトラブルを避ける最も有効な方法は、
「事前に家族で話し合っておくこと」です。
「お金の話はしづらい…」
「死後のことを話すのは縁起でもない…」
そうした気持ちも分かります。ですが、話し合わないままでいると、
結局は家族が“知らなかった遺言”によって深く傷つく結果にもなりかねません。
以下のようなステップで、段階的に備えることが大切です。
① 家族で終活の方向性を話す(誰に遺したいか、どうしてか)
② 専門家を交えて「法的に有効な遺言」を作成する
③ 定期的に内容を見直す(人間関係や資産状況は変わるため)
この中でも特に有効なのが「公正証書遺言」の活用です。
公証人(法律のプロ)が関与することで、遺言の有効性が高まり、
トラブルが起こる可能性が格段に低くなります。
【第4章】司法書士ができること──“家族の想い”を形に
司法書士は「登記の専門家」でもありますが、
もう一つの重要な役割は「相続や遺言のサポート役」です。
特に高齢者が不安を抱えながら進める終活において、
・法律的に正しいアドバイス
・家族にとっても納得のいく提案
・安心して残せる文書作成
といったサポートが求められます。
しげもり法務事務所では、
- 高齢者との丁寧な対話
- 家族の心情に寄り添った提案
- 実務経験に基づく迅速な手続き
を心がけ、相続・終活を支える法務サービスを提供しています。
【第5章】まとめ──「家族を守るための遺言」を考えよう
遺言は、財産をどう分けるかだけではありません。
それは「あなたの想いを、誰に、どう託すか」を形にするものです。
今回の事例のように、遺言が家族の信頼や感情を揺さぶるものであってはいけません。
本来、遺言は「家族の未来を守るもの」であるべきなのです。
「遺言なんてまだ早い」と思わずに、
「もしもの時に家族を困らせたくない」その想いから一歩を踏み出す。
それが、安心して老後を迎えるための大切な準備です。
【おわりに】
高齢者の終活は、家族の未来を支える大切なプロセスです。
“まさかの遺言”が起こる前に、できることがあります。
司法書士として、しっかりとサポートさせていただきます。
どんな些細なことでも、まずはお気軽にご相談ください。
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司法書士しげもり法務事務所
代表 繁森 一徳(大阪市)
親切・丁寧・確実な対応で、高齢者とご家族の“相続と終活”を全力サポートしています。
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