※半れあチャーシュー極太メンマにこってりスープ
「ダメだ、揉める未来しか見えない」──築40年・評価1億円の賃貸併用住宅をめぐる兄妹の相続問題を、司法書士が徹底解説
【はじめに:相続問題は誰にでも起こる“家族の課題”です】
こんにちは、大阪市の司法書士、繁森一徳です。
今回は、介護施設に入った父親と、ひとり暮らしになった母親を持つ55歳の長男・浩之さんが直面した相続のリアルな課題について、相続実務士の解説をもとに、司法書士としての視点から丁寧に解説いたします。
相続の現場では、「資産が多いほど揉める」という話を耳にする方も多いかもしれません。ですが、正確にいえば「資産の種類や分け方によって揉めやすくなる」というのが正しい表現です。
本件のように、評価額1億円の土地付き賃貸併用住宅、老朽化した建物、5,000万円の金融資産、そして認知症になった親が関わる相続は、まさに“複雑化”と“リスク”が重なった典型例と言えるでしょう。
私たち司法書士がこうしたケースでお手伝いできることは、「感情がもつれる前に、制度を使って整理すること」。
本記事では、「何が問題なのか」「どう備えるべきか」「どんな方法があるか」を、法的視点と実務の知恵の両面からお伝えします。
【1.状況整理:本件の相続構造とは】
まずは、事案の全体像を把握しておきましょう。
■登場人物
・浩之さん(55歳)…長男。両親とは別居。
・妹さん…他県に嫁ぎ、実家とは距離がある。
・父親…介護施設に入所。認知症あり。意思能力なし。
・母親…一人暮らし。心身は元気。
■相続対象の財産
・土地(評価額:約1億円)…最寄駅から徒歩5分の好立地。
・建物(築40年の自宅兼賃貸住宅)…建物評価額は300万円程度。
・賃貸収入…単身者向け住宅部分が現在も満室稼働。
・父親の金融資産…約5,000万円
・母親の金融資産…約3,000万円
■問題点
・父親が認知症のため、今後の処分・建て替えの決断が困難。
・相続税の申告が必要な財産規模。
・不動産の共有による将来のトラブルリスク。
・兄妹関係は良好だが、同居していないことから価値観のズレあり。
【2.司法書士が見る、相続の「見落としがちな落とし穴」】
一見、相続税の対策を講じればうまくいきそうにも見えるこの事案。しかし、実務では次のような「見落とされやすいリスク」が存在します。
### ① 認知症による“財産凍結”
父親がすでに認知症となっており、賃貸住宅の建て替えや売却など、今後の重要な決断ができない状態です。この状態で不動産を動かすには、「成年後見制度」などの制度を活用するしかありません。
ただし、成年後見は使い勝手が限定的で、「収益性を上げるための建て替え」などの経済合理性を理由にした行為が認められないケースもあります。
したがって、元気なうちに民事信託等で将来に備えるべきでしたが、それが間に合わなかった本件では、「今できること」に視点を切り替える必要があります。
### ② 共有は揉める。とくに「感情のズレ」が問題に
本件では、「収益不動産」という“実益”が絡むため、単なる土地の相続よりも複雑です。
家賃収入がある不動産を共有した場合、以下のような問題が発生しやすくなります。
・収益の分け方で揉める
・修繕費・管理方針で揉める
・将来的に売却したいか、保持したいかで揉める
「不動産を相続したい」ではなく、「不動産をどう使いたいか」が兄妹で一致していないと、高確率で将来トラブルになります。
【3.では、どう分ければ“争族”にならないのか?】
ここからは、実務でよく使われる「相続トラブル回避の鉄則」を3つご紹介します。
### 鉄則①:「不動産は単独相続」+「代償分割で公平感」
収益性のある不動産を兄妹で共有するのではなく、長男(浩之さん)が単独で相続し、その代わりに妹さんには金融資産などを渡してバランスをとる、というやり方です。
不動産は分けられませんが、金融資産であれば調整が可能です。これにより、「現物を等分できない」不動産相続のバランスを保つことができます。
この手法を「代償分割」といい、私の事務所でも多くの方にご提案しています。
### 鉄則②:母親の「二次相続」を見据えた設計を
今回の父親の相続だけでなく、「次に起きる母親の相続」も視野に入れておくことが、円満な家族設計のカギとなります。
・父親の相続時に母親へ多くの財産を集中させる(配偶者控除の活用)
・その上で、母親には生前贈与・遺言書・信託の準備を進める
これにより、「父の相続→母が整理→次世代へスムーズに引き継ぐ」という一連の流れをつくることができます。
### 鉄則③:話し合いは「元気なうちに」
相続の準備は、「不仲な家族のため」ではなく、「仲の良い家族が壊れないため」に行うものです。
民事信託、遺言書、死後事務委任契約、任意後見契約など、制度を使えば今のうちに意思を明確にし、トラブルを未然に防ぐことが可能です。
【4.司法書士からの提案:安心と整理の“仕組み化”を】
相続には「法律」と「感情」の両面があります。どちらか一方だけを見ても、うまくいかないのが現実です。
私の事務所では、次のようなサポートを通じて、家族の未来を守るお手伝いをしています:
■遺言書の作成サポート
■相続登記・名義変更の代行
■不動産の評価・売却・分割アドバイス
■高齢者支援制度(成年後見、任意後見など)の活用提案
相続は、「ある日突然」ではなく、「じわじわと、でも確実に」やってきます。
だからこそ、“まだ間に合う今”にこそ、動いておくことが、家族全員の安心につながるのです。
【まとめ:相続は「揉める」ものではなく、「備える」もの】
本件で印象的だったのは、浩之さんの「ダメだ、揉める未来しか見えない…」という言葉でした。
しかし、それを回避する道は確かに存在します。
不動産と金融資産のバランスを整理し、兄妹間の共有を避け、今から“仕組み”を整えること。
これが、司法書士としてお伝えできる最善の提案です。
相続は、資産をどう分けるかだけでなく、「家族の絆をどう守るか」を考える行為。
そしてそれは、法律だけではなく、“思いやり”と“事前準備”によって支えられています。
もし同じようなお悩みを感じていらっしゃる方がいれば、ぜひお気軽にご相談ください。
ご家族の安心の未来に向けて、一緒に最初の一歩を踏み出していきましょう。
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司法書士しげもり法務事務所
代表 繁森 一徳(大阪市)
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