※炙りメンマに半熟卵
「なんでお前だけ5,000万円も!?」遺言をめぐる兄弟の争いから考える“争族”の真実とその対策
【はじめに:遺言書が火種になることも】
こんにちは。大阪市で司法書士をしております、しげもり法務事務所の繁森一徳です。
今回ご紹介するのは、あるご兄弟の遺産相続をめぐるトラブル事例です。
遺言書を作っていれば安心…と思われる方も多いかもしれませんが、現実には「遺言書があるからこそ」揉めてしまうケースも少なくありません。
特に、「きょうだい間の格差」「親の想いが伝わっていない」「相続財産の種類の偏り」などが重なると、たちまち“争族”に発展してしまいます。
本記事では、事例を通して相続にまつわる現実と、司法書士の視点から見た予防策を5,000字のボリュームで詳しく解説していきます。
【事例紹介:長男の怒り、次男の主張】
——父の遺言書が、兄弟の仲を壊した——
■登場人物(仮名)
・長男:タカシさん(55歳)
・次男:ケンジさん(50歳)
お父様が亡くなられたあと、遺言書が見つかりました。相続人はこの兄弟2人のみ。
内容は次の通りです。
>「長男タカシには自宅を、次男ケンジには預貯金5,000万円を相続させる」
これを見た長男タカシさんは怒りをあらわにしました。
「なんでお前だけが5,000万円も相続するんだ!」
タカシさんにとって、自宅は価値があっても現金化しにくく、固定資産税や維持費もかかる“重荷”です。一方のケンジさんは、現金5,000万円。まさに“即金”で手に入る資産でした。
この一見「不公平」にも思える遺言が、兄弟間の溝を深めていったのです。
【兄弟の事情と、それぞれの主張】
長男タカシさんは、地方で工場を経営する中小企業の社長。従業員の給与、設備投資など、日々の経営に奔走しており、決して裕福ではないものの、安定した収入はあります。
一方、次男ケンジさんは、かつて東京でITベンチャーを経営していたものの失敗。現在はアルバイト生活で借金も残っており、経済的にはかなり厳しい状況にあります。
ケンジさんはこう主張します。
「僕には借金があることを、父は知っていた。だからこそ助けるつもりで、この遺言にしてくれたんだ」
しかしタカシさんは譲りません。
「それはあくまでお前の都合だ。父の遺産は、兄弟で平等に分けるべきだ。自宅なんて売れなければただの負担だぞ!」
このように、**“想い”と“現実”がぶつかり合うとき、相続は泥沼化する**のです。
【専門解説:遺留分と遺留分侵害額請求とは】
このようなケースで注目されるのが、「遺留分」の制度です。
■遺留分とは?
相続人に最低限保証される財産の割合です。民法では、
- 子ども(今回の兄弟)は、法定相続分の2分の1
- 両親は法定相続分の3分の1
が、それぞれ「遺留分」として認められています。
■遺留分侵害額請求とは?
遺言などによって、自分の遺留分が著しく少なくなったときに、他の相続人に対してその不足分を「金銭で請求」できる制度です。
今回のように、長男が「自宅のみ(評価3,000万円)」、次男が「現金5,000万円」を受け取るような場合、遺産全体が8,000万円だとすれば、長男にも本来4,000万円分の権利があります。
差額1,000万円分を、遺留分侵害額として請求できる可能性があるのです。
※注意点:この請求は「相続開始を知ってから1年以内」に行使しないと時効により失効します。
【なぜ相続は“争族”になるのか?】
相続トラブルの多くは、実は「財産の多寡」よりも「感情のもつれ」に起因しています。
✔ 自分だけ損していると感じる不公平感
✔ 親の想いが理解されず、勝手に解釈される
✔ 家族間の溝が、相続をきっかけに表面化する
さらに、不動産の扱い方や、現金との“分けにくさ”も争いの火種になります。
たとえば、自宅を相続してもすぐに現金化できず、維持費もかかるとなると、「実質的に損」と感じることもあるのです。
【司法書士の視点:相続争いを防ぐ3つの具体策】
では、どうすればこのような「争族」を防げるのでしょうか?
司法書士の立場から、具体的な対策を3つご紹介します。
### 1. 遺言書だけでなく、「想いを言葉で伝える」
どんなに法的に有効な遺言書であっても、それが「なぜそうしたのか」まで伝わらなければ、誤解を招きます。
遺言書の内容について、元気なうちに家族へ説明しておくことは、トラブルを大きく減らす効果があります。
### 2. 不動産と現金の「価値の差」に配慮した設計
不動産は評価が難しく、流動性もありません。できれば、複数の相続人がいる場合は、現金比率を高めることがスムーズな相続に繋がります。
不動産を誰かが取得する場合は、他の相続人への「代償金」も視野に入れましょう。
### 3. 第三者(司法書士・弁護士)による事前相談
家族だけで話すと、かえって感情的になることも。
専門家を交えることで、冷静な判断と公平な助言が受けられます。
特に「遺留分に配慮した遺言書」や「民事信託」の設計など、制度を活用した提案も可能です。
【まとめ:相続は、亡くなった後では遅い】
今回の事例は、決して特別な話ではありません。
むしろ、多くのご家庭で起こり得る“相続あるある”です。
家族関係が良好なうちにこそ、備えておくべき課題です。
☑ 自分の想いが伝わる形での遺言書作成
☑ 財産の性質に応じた公平な分配
☑ 専門家の力を借りた円満な準備
こうした一つひとつの積み重ねが、「争わない相続」を実現します。
しげもり法務事務所では、高齢者の方やそのご家族に安心して相談していただけるよう、温かく、誠実なサポートを心がけております。
「まだ早い」と思っている今こそが、実は最適なタイミングかもしれません。
ぜひ一度、お気軽にご相談ください。
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