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事実婚の相手に相続権はある?遺言書がないとどうなる?司法書士が解説
【はじめに:事実婚と相続という、現代的な課題】
2024年1月16日、大阪高裁で「事実婚の配偶者に相続権を認めない」という判決が下されました。
この判決は、今後の相続実務に大きな影響を与えるものとして、法律実務家の間でも注目されています。
しかし、こうしたニュースを見て「うちは関係ない」と思ってしまう方も多いかもしれません。
特に、今40〜50代の方にとっては「自分の親や家族には関係ない話だ」と感じるかもしれませんが、実はこれは他人事ではありません。
・親が再婚せずにパートナーと暮らしている
・兄弟姉妹で介護や財産の分担を話し合うことが増えてきた
・自分たちの世代でも法律婚ではないパートナーと暮らす人が増えている
そうした背景のなかで、「事実婚の相手は遺産を相続できるのか?」という問題は、今後ますます身近なテーマになるはずです。
【事件の概要:夫婦別姓を望んだ夫婦と、認められなかった相続権】
事件の舞台は、がんで亡くなった大学教授の女性と、そのパートナー。
1991年から事実婚の関係を続けてきたこの夫婦は、夫婦別姓を望んだために婚姻届を提出せず、内縁関係を選択しました。
女性は2020年に膵臓がんと診断され、2021年に亡くなりました。
その後、彼女の妹が「兄(=事実婚の夫)が姉の口座から1750万円を不当に引き出した」として訴訟を提起。
夫側は「自筆の遺言書に、預金を自分と妹に半分ずつ分けると書かれていた」と主張しましたが、その文書には遺言としての法的要件(署名・押印など)が不足していたため、裁判所はこれを無効と判断しました。
その結果、事実婚の夫には法定相続権がないとされ、妹の請求通りに全額返還が命じられたのです。
【法律婚と事実婚の違いとは?】
そもそも、「法律婚」と「事実婚」は何が違うのでしょうか?
■法律婚
婚姻届を市区町村に提出し、受理された婚姻。戸籍上も夫婦となり、民法上の権利義務が発生する。
■事実婚
一緒に暮らし、生活を共にしていても、婚姻届を出していない関係。いわゆる「内縁関係」とも言われる。
事実婚にも一定の法的保護はあります。
たとえば、内縁関係でも生活費の分担や、別れる際の慰謝料請求、事実婚解消時の財産分与などが認められるケースもあります。
しかし、「相続」については別です。
法律婚の配偶者は、法律上の相続人として第1順位に該当しますが、事実婚の配偶者には法定相続権がありません。
そのため、どれほど長く共に暮らしていても、法律的には「他人」として扱われてしまうのです。
【遺言書があればすべて解決できたのか?】
今回の事件でも、自筆の遺言書があったとされています。
では、なぜそれで遺産を受け取れなかったのでしょうか?
理由は「形式不備」です。
日本の法律では、自筆証書遺言には以下の3点が必要とされています:
全文が自筆であること
日付が明記されていること
署名・押印があること
これらが一つでも欠けると、遺言書としての効力が認められません。
さらに、「具体的に何を誰に相続させるか」も明確に記す必要があります。
今回の遺言は、この要件を満たしていなかったため、裁判所は無効と判断しました。
逆にいえば、正しい形式で遺言書を残していれば、事実婚のパートナーにも財産を遺すことは可能です。
【高齢の親が内縁関係にある場合の備え】
私が日頃ご相談を受けている中でも、「父が再婚せずに女性と暮らしている」「母が長年一緒に住んでいる男性がいる」というケースは少なくありません。
このような関係性は、本人たちの意志を尊重するべきである一方で、法律的には極めて不安定な立場に置かれます。
■よくあるご相談とリスク
・パートナーが介護していたのに、亡くなったとたん相続権がなく住まいを追い出されそうになった
・親の死後、兄弟間で「誰がどれだけ世話をしたか」で揉めてしまった
・パートナーが親の預金を引き出していたことが発覚し、法的トラブルに
こうしたトラブルを防ぐためには、事前に次のような準備が大切です:
・法的要件を満たす遺言書を作成する(公正証書遺言がおすすめ)
・遺言執行者を指定しておく
・誰に何を遺すかを具体的に記しておく
・信頼できる専門家に相談する
【私たちにできること――安心の終活支援を】
司法書士として、私が何よりも大切にしているのは「その人の想いを、法的に守ること」です。
どれだけ長年連れ添っても、法律に則った備えがなければ、大切な人に財産を遺すことができない。
これはとても悲しい現実です。
ですが、逆に言えば、正しい備えをすれば、法的に守ることは可能です。
・家族構成が複雑になってきた
・再婚や事実婚をしている親がいる
・兄弟で介護や相続について揉めたくない
そうした想いを持つ40〜50代の皆さまにこそ、今こそ「親の終活」について前向きに話し合い、備えることをおすすめします。
【まとめ:相続は“気持ち”ではなく“法律”で決まる】
今回の大阪高裁の判決は、家族の関係性が多様化する現代社会において、いかに法律の備えが重要かを教えてくれています。
家族のかたちがどうであれ、大切な人の想いを守るためには、法的な手続きと備えが必要です。
相続は、「想いのバトン」を未来へとつなぐ行為でもあります。
「うちは大丈夫かな?」「親のことが少し心配だな」
そう思った方は、どうぞお気軽にご相談ください。
地域に根ざした司法書士として、ご家族一人ひとりの想いに寄り添いながら、安心の相続・終活サポートをご提供いたします。
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司法書士しげもり法務事務所
代表司法書士 繁森 一徳(大阪市)
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