

目次
1. 増加する「デジタル遺品」トラブルの実態
2. 80代の親がスマホを使う時代のリスク
3. デジタル終活の3つのステップ
4. エンディングノートに書くべき項目リスト
5. 親との対話の始め方【実践編】
6. よくある質問と専門家の回答
7. まとめ:今日からできる小さな一歩
1. 増加する「デジタル遺品」トラブルの実態
デジタル遺品とは?
「デジタル遺品」とは、故人がスマートフォン、パソコン、クラウドサービスなどに残したデジタルデータやアカウント情報のことを指します。
具体的には以下のようなものが含まれます:
スマホやPCのロック解除パスワード
LINE、Facebook、InstagramなどのSNSアカウント
ネット銀行、証券口座、仮想通貨
サブスクリプションサービス(動画配信、音楽、新聞など)
クラウドに保存された写真や動画
メールアカウント
電子マネーやポイント
国民生活センターへの相談が急増
2024年11月、国民生活センターは「デジタル遺品」に関する注意喚起を発表しました。
相談内容で多いのは:
「故人のスマホのパスワードがわからず、サブスクの解約ができない」
「ネット銀行に預金があるはずなのに、ログイン情報が不明で相続手続きができない」
「亡くなった父の取引先に連絡したいが、スマホが開けず連絡先がわからない」
こうした相談は年々増加しており、もはや一部の家庭だけの問題ではありません。
「うちは関係ない」は危険
「うちの親はスマホをそんなに使っていないから大丈夫」と思っていませんか?
実は、80代でもLINEで孫と連絡を取り、写真を撮り、ネットショッピングを楽しむ方が増えています。そして、その多くが「パスワードを家族に伝えていない」のが現実です。
2. 80代の親がスマホを使う時代のリスク
親世代の「デジタル化」が進んでいる
かつて「ガラケーで十分」と言っていた親世代も、今やスマホが当たり前の時代です。
コロナ禍でオンライン診療やビデオ通話が普及
銀行の窓口が減り、ネットバンキングの利用が増加
孫とのLINEやビデオ通話が日常に
こうした変化により、80代の親もデジタル機器に依存する生活が当たり前になりました。
「もしも」は突然やってくる
親が急に入院してしまった
認知症の症状が出始めた
突然の訃報
こうした「もしも」の時、スマホが開けなければ:
大切な家族写真が見られない
取引先や友人への連絡ができない
ネット銀行の預金が把握できない
サブスクの解約ができず、不要な支払いが続く
相続財産の全容が把握できない
専門家として見てきた「困った事例」
相続・遺言の専門家として、私は数多くの「デジタル遺品トラブル」を目にしてきました。
事例1:ネット銀行の預金が発見できなかった
故人が複数のネット銀行に口座を持っていたものの、家族は全く把握していませんでした。通帳もキャッシュカードもなく、ログイン情報も不明。結局、相続財産として申告できず、相続税の申告にも支障が出ました。
事例2:サブスクの解約ができず無駄な支払いが続いた
故人が契約していた月額制サービスが10件以上。家族はその存在を知らず、数ヶ月間、毎月数万円の支払いが続いてしまいました。
事例3:家族の連絡先がわからず訃報を伝えられなかった
故人のスマホが開けず、誰に訃報を伝えればいいのかわからない…。葬儀後に「なぜ教えてくれなかったのか」と親族から責められるケースもあります。
3. デジタル終活の3つのステップ
ステップ1:パスワードを「紙」に書く
デジタル時代だからこそ、最も確実なのは「紙に書く」こと。
書くべき情報:
スマホのロック解除パスワード(暗証番号、パターン)
PCのログインパスワード
Apple ID、Googleアカウント
主要なサービスのID・パスワード
保管方法:
エンディングノートに記載
カードサイズの紙に書いて封筒に入れる
信頼できる家族(配偶者や子ども)に預ける
セキュリティ対策:
「パスワードを書くのはセキュリティ的に不安」という方は、以下の工夫を:
封筒に入れて封をし、「私に何かあった時に開封してください」と記載
貸金庫に保管
弁護士や司法書士に預ける
ステップ2:利用中のサービスを一覧化
意外と把握していない「デジタル契約」をリストアップしましょう。
チェックリスト:
ネット銀行(楽天銀行、PayPay銀行など)
証券口座(SBI証券、楽天証券など)
仮想通貨取引所
電子マネー(PayPay、楽天ペイ、Suicaなど)
ポイントサービス(楽天ポイント、Tポイントなど)
サブスクリプション(Netflix、Amazon Prime、新聞、音楽など)
SNSアカウント(LINE、Facebook、Instagram、Xなど)
クラウドサービス(iCloud、Google Drive、Dropboxなど)
ショッピングサイト(Amazon、楽天市場など)
保険・証券のオンライン契約
記載内容:
サービス名
登録メールアドレス
ID・パスワード
月額料金(サブスクの場合)
継続・解約の希望
ステップ3:大切な写真・データの保存場所を伝える
家族との思い出の写真や動画は、何よりも大切なデジタル遺品です。
伝えるべき情報:
スマホ本体に保存されている写真・動画
クラウド(iCloud、Googleフォト)の保存状況
SDカードや外付けハードディスクの保管場所
パソコン内のフォルダ構成
具体例:
「iPhone内の『家族アルバム』フォルダには孫との写真が1000枚以上入っています。iCloudにバックアップしているので、Apple IDとパスワードがあればアクセスできます」
4. エンディングノートに書くべき項目リスト
デジタル終活専用のページを作ろう
一般的なエンディングノートに「デジタル情報」のページがない場合は、自分で追加しましょう。
基本情報:
スマホの機種・電話番号
PCのメーカー・機種
プロバイダ情報
パスワード一覧:
サービス名、ID/メールアドレス、パスワード、備考の各項目を記載
例:iPhone、●●●@gmail.com、●●●●、Face ID登録済
例:楽天銀行、●●●@gmail.com、●●●●、口座番号:1234567
重要データの保存場所:
家族写真:iCloud(容量200GB契約中)
重要書類のスキャンデータ:Googleドライブの「重要」フォルダ
仕事関係の資料:PC内の「Documents」フォルダ
希望事項:
SNSアカウントは削除してほしい/追悼アカウントにしてほしい
写真はすべて家族で共有してほしい
仕事関係の連絡先には〇〇から連絡してほしい
5. 親との対話の始め方【実践編】
「終活」という言葉を使わない
「終活」や「もしもの時」という直接的な言葉は、親に不快感を与えることがあります。
NG例:
「お父さん、そろそろ終活しなきゃダメだよ。スマホのパスワード教えて」
OK例:
「お母さん、この前テレビで見たんだけど、スマホの写真が突然消えちゃうこともあるんだって。バックアップとか大丈夫?もし何かあった時、せっかくの孫の写真が見られなくなったら困るから、一緒に確認してみない?」
きっかけ作りの4つのアプローチ
1. ニュースや記事をシェアする
「こんな記事見つけたんだけど、最近こういうトラブル増えてるらしいよ」とYahoo!ニュースの記事を見せる。
2. 自分の話から入る
「実は私もエンディングノート書き始めたんだ。お父さんも書いてる?」と、自分が先に実践している姿を見せる。
3. 孫を理由にする
「孫の〇〇ちゃんの写真、お母さんのスマホにたくさんあるよね。もしスマホが壊れたら全部消えちゃうから、バックアップしておこうよ」
4. 専門家の言葉を借りる
「司法書士さんが言ってたんだけど、最近デジタル遺品でトラブルになる家族が多いんだって。うちは大丈夫かな?」
段階的に進める
一度にすべてを聞き出そうとせず、段階的にアプローチしましょう。
第1段階:スマホのパスワードだけ
「もし入院とかになった時、連絡先がわからないと困るから、スマホのパスワードだけでも教えておいて」
第2段階:利用中のサービスの確認
「Netflix とか Amazon とか、どんなサービス使ってる?もし解約が必要になった時に困るから」
第3段階:エンディングノート全体
「せっかくだから、他のことも整理してみない?」
6. よくある質問と専門家の回答
Q1. パスワードを書いたエンディングノートを紛失したら?
A. 貸金庫や弁護士・司法書士に預けることをおすすめします。また、「パスワード変更履歴」を残しておくことで、万が一紛失しても再発行の手がかりになります。
Q2. 親が「面倒くさい」と拒否したら?
A. 無理強いは逆効果です。「写真だけでも」「LINEの連絡先だけでも」と、最小限のお願いから始めましょう。また、「私が困る」ではなく「お母さんの大切な思い出を守りたい」という視点で伝えると受け入れやすくなります。
Q3. デジタル遺品の法律的な扱いは?
A. 現行法では、デジタル遺品に関する明確な規定はまだ整備されていません。各サービスの利用規約によって対応が異なるため、事前に確認しておくことが重要です。例えば、Appleには「デジタルレガシー」、Googleには「アカウント無効化管理ツール」があります。
Q4. SNSアカウントはどうすべき?
A. 本人の希望を事前に確認しておきましょう。選択肢は主に3つ:
1. 削除
2. 追悼アカウント化(FacebookやInstagramに機能あり)
3. そのまま残す
Q5. 80代の親に「今さらエンディングノート」は遅い?
A. 決して遅くありません。むしろ「今日が一番早い日」です。認知症が進行してからでは、本人の意思確認ができなくなります。元気なうちだからこそ、準備ができるのです。
7. まとめ:今日からできる小さな一歩
デジタル終活は「家族への思いやり」
デジタル終活は、決して「縁起でもない話」ではありません。
それは、残される家族への「思いやり」であり、自分の人生の大切な記録を守る「自己防衛」でもあります。
今週末、実家で親と話してみませんか?
この記事を読んだ今日が、始めるベストタイミングです。
今日できる3つのアクション:
1. 親に電話する
「最近、デジタル遺品のトラブルが増えてるらしいよ。スマホのパスワード、教えておいてもらえる?」
2. エンディングノートを購入する
書店や文具店、Amazonでも購入可能。親へのプレゼントとして渡すのも良い方法です。
3. この記事を親にシェアする
LINEやメールで「こんな記事見つけたよ」と送ってみる。
専門家として伝えたいこと
相続・遺言の専門家として、私は数多くの「もっと早く準備しておけば…」という後悔の声を聞いてきました。
デジタル終活は、特別な知識もお金も必要ありません。
必要なのは、ほんの少しの勇気と、家族との対話だけ。
80代の親を持つ40代の私たちだからこそ、今、行動を起こしましょう。
大切な家族の思い出を守るために。
残された家族が困らないために。
今日から始める「デジタル終活」、応援しています。
参考記事:
「デジタル終活の3つのステップ!」家族を悩ませる《デジタル遺品》エンディングノートに何書けば良いの?
https://news.yahoo.co.jp/articles/9131bf08c04017b1caad8c110e0979d74461b297