

はじめに:相続登記義務化で何が変わったのか?
2024年4月1日、相続登記が義務化されました。これまで任意だった不動産の名義変更手続きが、法律で義務づけられるようになったのです。義務化から約1年半が経過した今、多くの方が「相続登記を自分でできないだろうか?」と考えるようになりました。
特に、80代の親を持つ40代の方々にとって、相続は決して他人事ではありません。いつか必ず訪れる「その時」に備えて、相続登記について正しく理解しておくことが重要です。
本記事では、相続・遺言を専門とする司法書士の視点から、「自分で相続登記をすることは本当に可能なのか?」「どんな準備が必要なのか?」について、分かりやすく解説します。
相続登記義務化とは?知っておくべき基本知識
義務化の背景と目的
相続登記の義務化は、全国で増加する「所有者不明土地問題」を解決するために導入されました。相続が発生しても登記が放置されることで、土地の所有者が分からなくなり、公共事業や災害復旧の妨げになっていたのです。
いつまでに手続きが必要?
相続登記は、「相続を知った日から3年以内」に行う必要があります。正当な理由なく期限内に登記しない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。
対象となる不動産
2024年4月1日以降に発生した相続
2024年4月1日より前に発生した相続(遡及適用)
つまり、過去に相続した不動産でも、まだ登記していない場合は対象となります。
相続登記を「自分でやる」メリットとデメリット
メリット:費用を抑えられる
最大のメリットは、司法書士報酬が不要になることです。一般的に、司法書士に相続登記を依頼すると、5万円から10万円程度の費用がかかります。
自分で行えば、この費用を節約できます。
デメリット①:時間と労力がかかる
相続登記には、以下のような複数のステップがあります:
1. 戸籍謄本の収集:被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍が必要
2. 相続人の確定:法定相続人全員の戸籍・住民票を取得
3. 遺産分割協議書の作成:相続人全員の合意と実印・印鑑証明が必要
4. 登記申請書の作成:専門的な書式に従って正確に記入
5. 法務局への提出:窓口または郵送で提出
6. 補正対応:不備があれば何度も修正が必要
これらを全て自分で行うには、相当な時間と労力が必要です。
デメリット②:専門知識が必要
相続登記には、民法・不動産登記法などの専門知識が求められます。特に、以下のようなケースでは、素人が対応するのは非常に困難です:
相続人が多数いる
不動産が複数ある
遺言書がある
相続放棄をした人がいる
代襲相続が発生している
デメリット③:ミスのリスク
書類に不備があると、何度も補正が必要になります。最悪の場合、誤った登記をしてしまい、後でトラブルになる可能性もあります。
実際に自分で相続登記をやってみた人の体験談
ケース①:平日に5回も役所・法務局に通った50代男性
「父の相続登記を自分でやろうと思い、まず戸籍を取りに行きました。でも、父が転籍を繰り返していたため、3つの市区町村から戸籍を取り寄せる必要がありました。平日に何度も休みを取るのが大変で、結局1ヶ月以上かかりました」
ケース②:登記申請書の書き方が分からず挫折した40代女性
「ネットで調べながら登記申請書を作成しましたが、専門用語が多くて理解できませんでした。法務局に相談に行っても、具体的な書き方は教えてもらえず、結局司法書士に依頼しました」
ケース③:相続人全員の協力が得られず断念した60代男性
「兄弟4人で遺産分割協議をしようとしましたが、なかなか全員のスケジュールが合わず、印鑑証明を集めるだけで3ヶ月かかりました。途中で面倒になり、専門家に任せることにしました」
「自分でできる人」と「専門家に頼むべき人」の見極め方
自分でできる可能性が高い人
平日に時間が取れる
相続人が少ない(配偶者と子のみなど)
不動産が1つだけ
遺産分割協議がスムーズに進む
法律用語に抵抗がない
専門家に頼むべき人
平日に時間が取りにくい会社員
相続人が多数いる、または関係が複雑
不動産が複数ある
遺言書がある
相続税の申告も必要
期限が迫っている
司法書士に依頼した場合の費用相場
報酬の内訳
相続登記の基本報酬:5万円から8万円
戸籍収集代行:1万円から3万円
遺産分割協議書作成:1万円から3万円
登録免許税:固定資産税評価額の0.4%(実費)
合計すると、8万円から15万円程度が一般的な相場です。
費用対効果を考える
確かに費用はかかりますが、その分、以下のメリットがあります:
確実・正確な手続き
時間の節約
精神的な負担の軽減
法的リスクの回避
特に、仕事や家庭で忙しい40代の方にとって、「自分の時間をどこに使うか?」という視点は重要です。
80代の親を持つ40代が今すぐやるべきこと
①親の不動産を把握する
まずは、親がどんな不動産を持っているか、正確に把握しましょう。固定資産税の納税通知書を見れば、所有不動産が分かります。
②家族で話し合う
相続の話は切り出しにくいものですが、元気なうちに家族で話し合っておくことが大切です。「将来、不動産をどうしたいか?」を聞いておくだけでも、後の手続きがスムーズになります。
③遺言書の作成を勧める
親に遺言書を書いてもらうことで、相続トラブルを未然に防ぐことができます。特に、不動産が複数ある場合や、相続人の間で公平に分けにくい財産がある場合は、遺言書が重要です。
④専門家に相談する
「まだ相続は先のこと」と思っていても、いざという時は突然やってきます。事前に司法書士などの専門家に相談しておくことで、いざという時に慌てずに済みます。
まとめ:後悔しない相続登記のために
相続登記の義務化により、「やらなければならないこと」が増えました。しかし、これは決して悪いことではありません。むしろ、相続について家族で向き合う良いきっかけになります。
「自分で相続登記をする」ことは、確かに可能です。しかし、その分、時間・労力・精神的負担がかかることも事実です。
大切なのは、「自分にとって何がベストか?」を冷静に判断することです。
時間に余裕があり、自分でやってみたい → 挑戦してみる
忙しくて時間が取れない、ミスが心配 → 専門家に依頼する
どちらが正解ということはありません。ご自身の状況に合わせて、後悔のない選択をしていただければと思います。
私たち司法書士は、相続登記のプロフェッショナルです。少しでも不安があれば、お気軽にご相談ください。あなたとご家族の大切な財産を、確実に次の世代へ引き継ぐお手伝いをさせていただきます。
元記事:
https://news.yahoo.co.jp/articles/c2932570929f380ea032ba392a6eb9d510d3f73c
この記事を書いた人
相続・遺言専門の司法書士。80代の親を持つ40代の方々を中心に、数多くの相続登記をサポート。「分かりやすく、寄り添う対応」をモットーに、日々相談業務に取り組んでいます。