

はじめに
2025年4月、政府が閣議決定した民法改正案により、日本の相続実務に大きな変化が訪れようとしています。その中でも特に注目されるのが、「自筆証書遺言のデジタル化」と「成年後見制度の終身制廃止」です。
これまで「遺言書は全文自筆で書かなければならない」という原則があり、高齢で手が不自由な方にとっては大きなハードルとなっていました。また、成年後見制度は「一度始めたら終わらない」という硬直性が指摘されてきました。
今回の改正は、これらの課題を解決し、より多くの人が安心して相続準備に取り組める環境を整えるものです。
特に、80代の親を持つ40代の方にとって、この改正は「今すぐ親と話すべきテーマ」です。本記事では、法改正の内容を詳しく解説し、具体的に何をすべきかをお伝えします。
第1章:自筆証書遺言のデジタル化とは何か
自筆証書遺言とは
自筆証書遺言とは、遺言者が自分で書く遺言書のことです。公正証書遺言と異なり、公証役場に行く必要がなく、費用もかからないため、多くの方に利用されてきました。
ただし、これまでは「財産目録を除き、全文を自筆で書く」ことが法律で義務付けられていました。
高齢者にとっての「自筆」の壁
80代、90代になると、手が震えたり、関節が痛んだりして、長文を手書きすることが困難になります。また、何度も書き直す必要がある場合、そのたびに全文を書き直すのは大きな負担です。
「遺言書を書いてほしい」と子どもが願っても、親が「字が書けないから無理」と断るケースは少なくありません。
デジタル遺言で何が変わるのか
今回の民法改正により、スマートフォンやパソコンを使って遺言書を作成できるようになります。
具体的には、以下のようなメリットがあります。
・手書きの負担がなくなる
・修正や書き直しが簡単
・文字が読みやすく、解釈の誤りが減る
・遺言書作成のハードルが大幅に下がる
一方で、デジタルならではの課題もあります。
本人確認と改ざん防止の仕組み
デジタル遺言の最大の課題は「本当に本人が作成したのか」という本人性の確認です。
手書きであれば筆跡で本人確認ができますが、デジタルの場合はそうはいきません。そのため、以下のような仕組みが検討されています。
・電子署名の活用
・マイナンバーカードによる本人認証
・タイムスタンプの付与
・専用アプリの開発
実務では、これらの技術を組み合わせて、安全で信頼できる遺言書作成の仕組みが整備される見込みです。
第2章:成年後見制度の終身制廃止とは
成年後見制度の基本
成年後見制度とは、認知症や精神障害などにより判断能力が不十分な方を保護・支援するための制度です。
家庭裁判所が選任した後見人が、本人に代わって財産管理や契約行為を行います。
終身制の問題点
これまでの成年後見制度には「終身制」という大きな問題がありました。
一度後見人がつくと、本人が亡くなるまで制度を終了することができず、たとえ判断能力が回復したとしても、後見人を外すことは極めて困難でした。
また、後見人への報酬が発生し続けるため、家族にとって経済的負担となるケースもありました。
終身制廃止で何が変わるのか
今回の民法改正により、以下のような柔軟な運用が可能になります。
・判断能力が回復した場合、制度を終了できる
・必要性がなくなった場合、後見を解除できる
・段階的な支援が可能になる
これにより、成年後見制度がより使いやすく、現実に即したものになることが期待されています。
第3章:40代が今すぐすべき相続準備
親と話すタイミングは「今」
「相続の話は縁起が悪い」
「親がまだ元気だから大丈夫」
そう思っている方も多いでしょう。しかし、相続準備は「元気なうちに始める」ことが鉄則です。
認知症になってからでは、遺言書を作成することも、家族信託を契約することもできません。
デジタル遺言を話題にする
今回の法改正は、親と相続の話を始める絶好のチャンスです。
「ニュースでデジタル遺言のこと見たんだけど、スマホで遺言書が作れるようになるんだって」
「手書きじゃなくていいなら、ちょっと考えてみない?」
こんなふうに、法改正をきっかけに自然に話を切り出すことができます。
相続の現状を把握する
親と話をする際には、以下の項目を確認しましょう。
・不動産(自宅、土地、賃貸物件など)
・預貯金(銀行名、支店、口座番号)
・有価証券(株式、投資信託など)
・生命保険(契約内容、受取人)
・借金やローンの有無
・遺言書の有無
これらを把握しておくことで、相続発生時にスムーズに手続きを進めることができます。
遺言書の作成を提案する
相続でもめる原因の多くは「遺言書がない」ことです。
遺言書があれば、親の意思が明確になり、兄弟間のトラブルを防ぐことができます。
デジタル遺言が実現すれば、作成のハードルは大きく下がります。ぜひ、親に提案してみてください。
家族信託も選択肢に
認知症対策として、家族信託も有効な手段です。
家族信託とは、親が元気なうちに、信頼できる家族に財産の管理を任せる契約です。
認知症になっても、契約に基づいて柔軟に財産を管理できるため、成年後見制度よりも使い勝手が良いとされています。
第4章:相続でよくあるトラブル事例
ケース1:遺言書がなく兄弟で揉める
父が亡くなり、遺産は自宅と預貯金1500万円。兄弟3人で分けることになったが、長男が「自分が家を継ぐべきだ」と主張し、話し合いが平行線に。結局、家庭裁判所での調停に発展し、2年以上かかった。
教訓:遺言書があれば、こうしたトラブルは防げます。
ケース2:認知症で口座が凍結
母が認知症と診断され、銀行口座が凍結。介護費用を引き出すことができず、成年後見制度の申立てをすることに。後見人が選任されるまで3か月かかり、その間の費用負担が家族にのしかかった。
教訓:認知症になる前に、家族信託や任意後見契約を結んでおくべきでした。
ケース3:空き家相続で兄弟が対立
父が亡くなり、実家を相続。誰も住む予定がないため売却したいが、長男が「思い出の家だから残したい」と反対。空き家のまま放置され、固定資産税や管理費用だけがかさんでいる。
教訓:生前に親の意思を確認し、遺言書に明記しておくことが重要です。
第5章:専門家に相談するメリット
相続は「知識」と「経験」が必要
相続手続きには、法律、税金、不動産など、多岐にわたる知識が必要です。
また、家族ごとに事情が異なるため、一律の答えはありません。
だからこそ、専門家のサポートが不可欠です。
司法書士ができること
相続遺言専門の司法書士は、以下のようなサポートを提供します。
・遺言書の作成支援
・相続登記(不動産の名義変更)
・家族信託の設計と契約書作成
・成年後見制度の申立て支援
・相続人調査と財産調査
・遺産分割協議のサポート
「こんなこと聞いていいのかな」と思うことでも、遠慮なくご相談ください。
早めの相談が安心につながる
「まだ早い」と思っているうちに、親が認知症になってしまうケースは少なくありません。
相続準備は、早ければ早いほど選択肢が広がります。
まずは無料相談を利用して、現状を把握することから始めましょう。
まとめ
2025年の民法改正により、デジタル遺言と成年後見制度の柔軟化が実現します。
これは、高齢の親を持つ40代にとって、相続準備を始める絶好のタイミングです。
「親と相続の話をする」
「遺言書の作成を提案する」
「専門家に相談する」
この3つを、今日から始めてみてください。
相続は、誰にでも訪れる人生の一大イベントです。
準備をしておけば、家族の絆を守り、安心して次の世代にバトンを渡すことができます。
私たち相続遺言専門の司法書士は、皆様の不安に寄り添い、最適な解決策をご提案いたします。
どうぞお気軽にご相談ください。
元記事:
https://news.yahoo.co.jp/articles/4d93a364e3464eda38685f9238b84c008f773555
https://news.yahoo.co.jp/articles/0101bf989e051d41024e700ec44dd1ea294d8fff