

はじめに
「おひとりさま」という言葉を聞いて、どんなイメージを持ちますか?
自由で気ままな独身生活? それとも孤独な老後?
実は今、この「おひとりさま」が抱える「終活」の問題が、社会的な大きな課題になっています。
そんな中、青森県弘前市の社会福祉協議会が、画期的な取り組みを始めることが発表されました。
「おひとりさま終活サポート事業」――このニュースから見えてくる、現代日本の高齢者が直面する現実と、私たち世代が考えるべきことをお伝えします。
弘前市社会福祉協議会の「おひとりさま終活サポート事業」とは?
2026年度から弘前市社会福祉協議会が開始するこの事業は、身寄りのない高齢者を対象に、終活に関する総合的なサポートを提供するものです。
具体的なサービス内容は以下の通りです。
無料の相談窓口の開設
終活に関する不安や疑問について、無料で相談できる窓口が設けられます。
有償契約による総合支援「あずまし老いじたく」
月ごとの訪問や安否確認などの日常生活支援
入退院時の付き添いや病状説明への同席
死後の遺体引き取り、火葬、埋骨
各種手続きや支払いなどの死後事務
料金体系も明確で、支援計画作成の手数料が2万円、日常生活や入退院時の支援は利用状況に応じた月払い、死後事務の支援は契約時に預託金40万円を一括納付する仕組みです。
注目すべきは、営利目的ではなく、必要最低限の料金設定にしているという点です。
なぜ今「おひとりさま終活サポート」が必要なのか?
日本は世界でも類を見ない超高齢社会に突入しています。
2025年には、65歳以上の高齢者が全人口の約30パーセントを占めると言われています。
そして、高齢者の単身世帯も急増しています。
配偶者との死別、生涯未婚、離婚――さまざまな理由で、「おひとりさま」として老後を迎える人が増えているのです。
さらに深刻なのは、たとえ家族がいても「実質的におひとりさま」状態の方が増えていることです。
子どもは遠方で仕事が忙しく、なかなか帰ってこられない。
兄弟姉妹も高齢で、お互いに助け合うことが難しい。
親戚とは疎遠になっている。
こうした状況の中、入院時の保証人や、亡くなった後の手続きを誰に頼めばいいのか――これは切実な問題です。
民間事業者もこうしたサービスを提供していますが、料金の不透明さや、事業者の信頼性に不安を感じる方も少なくありません。
公的機関である社会福祉協議会が関与することで、安心感が大きく変わります。
弘前市の取り組みは、こうした社会的ニーズに応える、先進的な試みと言えるでしょう。
80代の親を持つ40代のあなたへ 今こそ「親の終活」について話し合うとき
この記事を読んでいる多くの方は、80代の親を持つ40代の方だと思います。
親はまだ元気。でも、確実に老いは進んでいます。
「そのうち話そう」「まだ大丈夫」――そう思っているうちに、認知症が進行したり、突然倒れたりするケースを、私は職業柄、数多く見てきました。
認知症になってからでは、遺言書を作ることも、財産管理の契約を結ぶことも、法的にできなくなる可能性があります。
今、親が元気なうちだからこそ、できることがあります。
終活について親と話し合う際のポイント
いきなり「遺言書を書いて」「財産はどうするの?」と切り出すのは、親にとってもショックです。
以下のようなステップで、少しずつ話を進めてみてください。
ステップ1 ニュースや身近な話題をきっかけにする
「最近、こんなニュースを見たんだけど…」と、今回の弘前市の取り組みや、終活に関するニュースを話題に出してみましょう。
ステップ2 親の意思を尊重する姿勢を示す
「お父さん(お母さん)が、将来どうしたいか聞かせてほしい」と、親の希望を聞く姿勢を見せることが大切です。
ステップ3 具体的な不安を共有する
「もし入院することになったら、誰が付き添う?」「通帳や印鑑はどこにあるか、私たちは知らないよね」といった、具体的な場面を想定して話してみましょう。
ステップ4 専門家の力を借りる
親子だけでは感情的になってしまうこともあります。司法書士や弁護士、ファイナンシャルプランナーなど、第三者の専門家を交えることで、冷静に話し合える場合もあります。
今からできる「親の終活サポート」
親と話し合った後、具体的に何をすればいいのでしょうか?
財産の棚卸し
預貯金、不動産、株式、保険など、親の財産を一覧にしてみましょう。
重要書類の場所を確認
通帳、印鑑、権利証、保険証券などがどこにあるか、確認しておきましょう。
エンディングノートの作成
親の希望を書き留めるエンディングノートを一緒に作成するのもおすすめです。
遺言書の作成
法的に有効な遺言書を作成することで、相続トラブルを未然に防げます。
家族信託や任意後見制度の検討
認知症になった場合に備えて、家族信託や任意後見制度の利用を検討しましょう。
おひとりさまでなくても「終活」は必要
今回の弘前市の取り組みは「おひとりさま」を対象としていますが、家族がいる方にとっても、終活は重要です。
なぜなら、「家族がいるから大丈夫」と思っていても、いざという時に家族が対応できない状況は珍しくないからです。
遠方に住んでいて、すぐに駆けつけられない。
仕事が忙しくて、時間が取れない。
家族間で意見が対立して、決められない。
こうした事態を避けるためにも、元気なうちに本人の意思を明確にし、必要な準備をしておくことが大切です。
相続の専門家として伝えたいこと
私は相続遺言専門の司法書士として、数多くのご家族の相続手続きをお手伝いしてきました。
その中で痛感するのは、「もっと早く準備していれば」というケースの多さです。
認知症が進行してから慌てて相談に来られても、できることは限られます。
遺産分割で家族が争い、絶縁状態になってしまったケースもあります。
亡くなった後に隠し子の存在が判明し、相続手続きが大混乱したこともあります。
こうした悲劇を防ぐために、今できることがあります。
それは、「話し合うこと」と「準備すること」です。
「縁起でもない」と言われるかもしれません。
でも、終活は「死ぬための準備」ではなく、「これからをより良く生きるための準備」です。
親にとっても、子どもにとっても、安心して過ごせる時間を増やすための、前向きな行動なのです。
まとめ 「まだ早い」が一番のリスク
弘前市社会福祉協議会の「おひとりさま終活サポート事業」は、これからの日本社会が直面する課題に対する、一つの答えを示しています。
でも、こうした公的サービスだけでは、すべての人をカバーすることはできません。
一人ひとりが、自分の、そして親の「これから」に向き合い、準備をすることが必要です。
80代の親を持つ40代のあなた。
今週末、実家に電話をかけてみませんか?
「最近、体調どう?」という何気ない会話から、少しずつ、「これから」の話を始めてみてください。
「まだ早い」という言葉が、実は一番のリスクです。
今だからこそ、できることがあります。
参考記事
社協が身寄りのない高齢者の終活サポート/青森県弘前
https://news.yahoo.co.jp/articles/03270e10e9e256ecfa938bd11c4e7ad372a905ab